そもそも「マーケティング」って何ですか?
MarkeZine編集部・吉永(以下、MZ):本連載では、西口一希さんに初心者マーケターが理解しておくべきマーケティングの基本を伺っていきます。まず、「マーケティング」という言葉はどういうことを指すのでしょうか?
西口:マーケティングに触れ始めたばかりの方は、迷うことが多いかもしれません。新社会人の研修などでも、マーケティングに対して「掴みどころがない」と感じる人が少なくないようです。よく見かけるのは「マーケティングとは売れる仕組み作り」「売るためのプロセス」といった定義でしょうか。
西口:それらも、ある側面から見れば間違いではないと思いますし、否定はしません。ですが、ただ売るところに注目するのではなく「誰に」「何を」売るのか、そして「なぜ買っていただけるのか」を考えることが大切だと思っています。
これはあくまで私の考えで、初心者向けの書籍に記載したものですが、マーケティングを次のように定義しています。
顧客のニーズを洞察し、顧客が価値を見いだすプロダクトを生みだすこと。さらに、その価値を高め続けて継続的な利益を生みだし、その利益を再投資して新たな価値をつくり続けること。
(『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p46より改変)
顧客が価値を見出すから、購買が成り立つ
MZ:売ることより、まず顧客のニーズに注目するところから始まるのですね。
西口:はい。ここでいうニーズには、顧客自身がまだ意識していない、潜在的な要望も含まれます。
MZ:使って初めて「こういうものが欲しかった」と思うケースですね。
西口:その通りです。それも含めて「欲しい」と思うであろう人を見つけ、同時に「欲しい」と思われるに値するプロダクトやサービスを生み出して提案する。これが、マーケティングの最初のステップです。
先ほどの定義を分解すると、以下の3つになります。
(1)顧客のニーズを洞察し、顧客が価値を見出すプロダクト・サービスを作る
(2)その価値を高め続けて、継続的な利益を生み出す
(3)その利益を再投資して、新たな価値を作り続ける
西口:この3つが循環することが、マーケティングだと考えています。
MZ:売ることはこの循環のどこにあるのでしょうか?
西口:今回の取材に際して私も改めて考えたのですが、実はこの定義では売ることを明言していませんでした。あえていうなら、(1)と(2)の間にあると思います。
顧客が価値を見出すプロダクトを生み出し、顧客になり得る方がプロダクトの存在に気づいて実際に価値を見出し、購買行動を取る。購買が成立して初めて売り上げ・利益が生まれ、さらに企業がその価値を高め続けることでリピートが生じ、継続的な利益が生まれます。