MarkeZine編集部より本連載の展開・構成のご紹介
ブランドが実際の市場でどう成長するのか実はよく知られていない、だからマーケティングが”ごっこ”になる――事業会社からアカデミアまでを巻き込み話題となった、文字通り”常識破り”のビジネス本『戦略ごっこ』(日経BP)。
本連載では、この「ごっこ論争」の仕掛け人である芹澤連氏にエビデンスベーストマーケティングの基礎を解説してもらう。エビデンスベーストマーケティングとは何か、の説明も以下にて添えておこう。
「エビデンスベーストマーケティングとは、国が異なっても、カテゴリーやブランドが異なっても、時代背景が異なっても、別の研究者がデータを取り直しても繰り返し観測される規則性(傾向)を理解し、マーケティングに役立てようという考え方。南オーストラリア大学アレンバーグ・バス研究所、バイロン・シャープ教授の『ブランディングの科学』(朝日新聞出版)が有名ですね」(芹澤氏)
『戦略ごっこ』は海外の先行研究レビューを中心とした構成になっているが、本連載では、理論と実証の両輪から「エビデンスベーストマーケティング」の実践に踏み込んでいくとのこと。MarkeZineで速報的に知れる内容もあるようだ。
「23年末の上梓以降、本書で登場したブランド成長の規則性はどこまで再現できるのか、エビデンスベーストマーケティングは日本にも当てはまるのかという質問を多くいただいています。
実際、ダブルジョパディや購買重複の法則、負の二項分布、平均への回帰、パレートシェア、新商品の普及パターンや主力商品の重要性などは、様々な国/カテゴリーで再現研究が行われているのですが、日本では体系立てた実証研究がまだありません。それなら自分たちでやってしまおうということで、現在、日本市場における再現研究を進めています。MarkeZineでは主に、シャンプーやコンディショナーといったヘアケアカテゴリーでの研究結果を速報的にお届けしたいと思います」(芹澤氏)
この再現研究は、全国各地の大手スーパーマーケットやドラッグストアをつなぐリテールメディアネットワークを構築し、そのなかで店舗数約8,200店、年間売上にして11兆円規模のトランザクション、リテールユーザーID数8,000万という膨大な実購買データを預かるカタリナマーケティングジャパンが全面的にサポート。『ブランディングの科学』や『戦略ごっこ』で紹介されたエビデンスを徹底検証するという。
「よく勘違いされているのですが、私は別に”コトラー嫌い”でも”バイロン・シャープ信者”でもありません。あえて言うならば、”ファクト”のファンです。つまり事実至上主義。ですので、事実が変われば意見を変えます。その意味では、カタリナマーケティングさんの大規模データでどういう結果が出るのか、1人のマーケティングサイエンティストとして非常に楽しみです!」(芹澤氏)
実証結果は、いくつかのカテゴリー/フェーズに分けて段階的に報告してもらう予定。芹澤氏が本連載を執筆するのは、ひとえに、より多くのマーケターにエビデンスベーストマーケティングを知ってもらい、実務に浸透させるため。そして、本連載に限らず、読者が参加できるオフラインイベントも開催していく。
「具体的には、初報を2024年8月8日に開催される日本マーケティング学会主催のマーケティングサロンにて(学会の会員のみ参加可能)、続報を2024年9月11~12日に開催されるMarkeZine Day 2024 Autumnにて発表する予定です」(芹澤氏)
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『戦略ごっこ』著者 芹澤氏が解く、マーケターの無意識の「既成概念 」 STP?差別化? 鵜呑みにしていた「定石」の真実を知る40分
学術論文と現実の市場はどこまで同じで、どこから異なるのか。日本ならではの成長法則は存在するのか。読者にとっては、改めて現在の取り組みを見直す機会になるだろう。
初回となる本記事では、エビデンスベーストマーケティングの世界観と、その根幹を支える「負の二項分布」について解説してもらう。