組織内の情報を最大限活用 他部署から集まる仕組み
早川氏が着目したのは、組織内に眠る情報だ。たとえば、営業資料や、広報が出している調査レポート、プロダクト部門が持っているUdemyの講座・講師情報など。これらをすべて集め、タグ付けして管理することにした。
「もちろん、この情報もすべて社内に公開しています。狙いは、今後他部署で新しいコンテンツができた時にそこからもマーケティングチームにコンテンツが集まってくるような仕組みにすることです」(早川氏)

早川氏のチームはこうして集めた既存の情報をコンテンツに加え、カスタマージャーニーにプロットしていった。プロットができたら、各コンテンツに対して一つずつメールを作成。メールのイメージも下図左側にあるようにシンプルなものだ。図の右側にある通り、MAツールを使ってカスタマージャーニーのフェーズごとの箱を作り、その箱の中にプロットしたコンテンツをセットしていった。

「どの箱に誰を入れていくのか、そしてその人たちをどう購買フェーズにまで上げていくのを考える必要があったので、MAツール上の顧客情報を精査しました」(早川氏)
属性情報に関してはフォームで取得する際にやはり多少の揺らぎが出てしまい、すぐには使えなかった。そこで、メールクリックやウェビナーへの参加などの行動属性だけを使い、配信セグメントを考えた。行動属性のみを使って設計する上で、早川氏は小さな単位で何回も実験しながら少しずつ最適化していったという。
「たとえば、あるウェビナーの参加者がカスタマージャーニーの「Warm」にいると仮定した場合、コンテンツAを見た時の反応をウェビナーに不参加の方々(母集団)と比較。コンバージョンに差があるかどうかなどを確認していきました」(早川氏)

完璧を目指さずスタートさせ、ユーザーからのフィードバックを増やす
ナーチャリング構築を「今あるもの」で行った早川氏。そこで獲得したリードはインサイドセールスへどのように連携してきたのか。
ここでも、早川氏は「完璧でなくていい」というスタンスで推進。MQLの基準も最初は流動的になることを前提に、インサイドセールス側の稼働状況や過去の施策実績などを見て、都度相談をしながらリードの条件を決定していった。架電時に配信したメールとの齟齬が生まれないように、メールの内容や紹介したコンテンツを共有したほか、「このコンテンツをダウンロードしてくれた人にはこんなアプローチをしてほしい」といったトークスクリプトのアイデアも作成、共有していったという。
架電結果のフィードバックも、新たに時間を作ってもらうのではなく、インサイドセールスの週次の共有会などに参加して得た。これをナーチャリングの改善につなげている。

「とにかく一人で抱え込まず、営業を巻き込むことが重要です。マーケティング担当は少数のケースが多いかと思います。そこで部署の枠組みを超えて周りの人をうまく巻き込みながらやることでスピード感が得られます。マーケティングに終わりはない。だからこそ完璧を目指さず、まずは今あるもので作り上げ、徐々にチューニングしてより精度の高いものにしていくことが大切ではないでしょうか」(早川氏)