効果測定すべき指標とその分析方法
BtoB企業は、実務でどのようなデータを基に効果測定をするといいのでしょうか。前回解説したアクション、アウトプット、アウトカムの3つの指標ごとに、量的指標と質的指標に二分類して考えます。
上記の表は、広報・PR活動を行う上で追うべき指標の例を、一覧化したものです。アクション指標では、量的指標と質的指標に分けて目標設定を行います。たとえば、「配信」の量的指標としては、「プレスリリース配信数」や「メディアリスト数」、質的指標としては「プレスリリース開封率」「リリース経由問い合わせ数」が挙げられます。
アウトプット指標では、記事などメディアでどのくらい・どのように取り上げられたのか確認します。そして、経営への貢献度合いを示すアウトカム指標を設定する際は、「売上」「自社サイトのリード獲得数」「その他」の3分類で指標を考えるといいでしょう。
特に以下の3つは、目標に設定することで自社のPR活動の現状把握と改善につながりやすいものです。
「想定リーチ数」
メディアが公開しているPV数や発行部数など、メディアの基礎データを基に想定されるリーチ数です。前期比や、類似した施策(導入実績を紹介するプレスリリース、調査リリースなど)との比較、競合ブランドのメディア露出データとの比較、競合と比較して自社がどの程度、市場で露出量を確保できているかを確認できるSOV(Share of Voice)分析などを行うことで、現状把握と今後の改善ポイントを得られます。
プレスリリース配信結果
1年間の配信本数、配信先メディア数、プレスリリース経由のメディア掲載数、問い合わせ数などをデータとして記録します。リリース配信システムを利用していれば、プレスリリースごとの開封率やプレスリリースのテーマ別の掲載記事数を比較しましょう。掲載率の高低による相違点を洗い出すことで、反響の事前シミュレーションや、タイトル付けのノウハウ蓄積など、活動の精度向上に役立てられます。
記事数
テレビ・新聞・雑誌・Webのメディア別に掲載記事を一覧化します。その際に複数の切り口で分類を行うと分析を行いやすくなります。たとえば媒体ジャンル(ビジネス系、ライフスタイル系、IT系など)、記事内容、掲載テーマ(商品・サービス、トップインタビュー、コーポレート、SDGsなど)で区別できると、自社のPR活動の傾向や今後目指すべき方向性が明確になります。
記事の内容については、注力メッセージを含む理想的な掲載がどれぐらいあったかを確認し、PR活動の目的・方針に応じた成果を定期的に把握しましょう。
BtoB企業広報によくある悩みとその解決策は
BtoB企業の広報担当者には、どのような悩みがあるのでしょうか。次に紹介するのは、当社が実際にご相談を受けた内容の一例です
例1「自社の業態認知を高めたい、企業イメージを更新したい」
企業名は有名でも、業態変革後に事業認知が低くなる企業があります。特に歴史ある企業やM&Aをした企業に多く見られるケースです。たとえば、オフィスのICTソリューションを提供しているのに機器メーカーとして認知されている場合や、総合コンサルティングを提供しているがITコンサルティングのイメージにとどまっている場合などがあてはまります。
このような悩みを持つ企業は、目指す姿を再定義し、自社の「枕詞」を設定しましょう。枕詞とは、プレスリリースなどで社名の前置きとして使用する、自社の事業を一言で説明する言葉です。また、プレスリリースの配信リストを見直し、業態変革後のジャンルをよく報じている媒体・記者への発信を強化するのもいいでしょう。記者へ個別に情報提供するなどの対応も有効です。
また、プレスリリースの開封率や記事化率をウォッチし、高水準で維持できるよう努めることも重要です。情報提供件数、記事化率、重点媒体の記事化率などを測定し、正しい業態が伝わる掲載を獲得できているか、検証しながら活動を改善しましょう。
例2「社名認知が業界内にとどまっており、業界外の認知を獲得したい」
業界内では大きなシェアを占めており、業績面では困っていないが、一般社会での社名認知が低いことで採用母集団の形成に苦戦するケースも多いです。
このような課題への対策としては、公共性の高い社会活動発信が効果的です。他社との共創プロジェクトを組成して活動をリードする、学生向け学習プログラムを通じて人材育成に取り組む、柔軟な働き方を推進するなど、会社を挙げて取り組むソーシャルグッドな活動をトピックにします。
データの活用面では、ベンチマークした企業のメディア露出データを基に「どのような媒体で露出しているか」「よく記事を執筆する記者は誰か」を把握し、今後の活動に役立てましょう。また「露出した記事がSNSでどれくらい拡散し、反響を得られたか」を経年で蓄積していくことで、反響を得やすい媒体に集中して掲載獲得を狙う活動も可能になります。