市場調査×ユーザーアンケートでユーザー認知とのギャップを埋める
村口氏は、ユーザーに対して「何を伝えるべきか(=What)」を定めるために、市場調査データを活用し、業界における自社の立ち位置を把握したと語る。
わかったのは、同社が掲げるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と世間での認識のされ方のズレ。競合サービスとの比較において、同社が考える「Pocochaらしさ」や「強み」がまだ多くの人に理解されていないという課題認識をもったのだという。
ただ、市場調査には、サービスを「なんとなく知っているだけ」の人の意見も大きく反映されてしまう。その上、調査項目は自社で定めるので拾いきれない声などが生じる可能性も高い。
そこでPocochaでは、外部のモニターに向けた市場調査の他に、ロイヤルユーザーへのユーザーアンケートを自社で実施。両方の結果を掛け合わせるのだという。特に同社では、このユーザーアンケートに多くの時間を投下しており、2017~2022年の6年で1,572人に対して実施、トータルで1,858時間にも上る。
このように、ユーザーと実際に向き合う中で得た情報を基に自社のMVVとユーザーが使用する中で感じることのギャップを捉え、「すべての人にとってフレンドリーなプラットフォームになる」というPocochaのブランドプロミスを策定していった。
マスプロモーションの広告効果を定量的に評価
同社が次に紹介したのは、ユーザーに伝えるべき内容が定まった後に重要となる「どのように伝えるべきか(=How)」を策定する手法だ。同社はここでもユーザーアンケートのデータを活用し、その結果からロイヤルユーザーの中には通常のテレビCMをコンテンツのノイズに感じる視聴者が複数いると判明。コンテンツを楽しみながらPocochaを知れる手段が必要だとわかり、テレビ東京で放送されたドラマ「これから配信はじめます」や主題歌のMVの制作協力などに取り組んだ。
同ドラマの最高視聴率は、深夜帯の放映にもかかわらず1%超に。Xのトレンドランキングでも1位にランクインした。ドラマのオンエア後に再度調査を実施し、Pocochaユーザーを対象に好意度を聞いたところ、配信者側・視聴者側ともに多くのユーザーで満足度が高い傾向が見られた。
具体的な施策効果の分析においても、リサーチデータの活用が肝になったと村口氏は語る。
「ユーザーアンケートにユーザーのログデータを掛け合わせることで、ドラマの放送後にPocochaを利用した自然流入による新規ユーザーのうち、20%がドラマきっかけだったことがわかっています」(村口氏)
加えてPocochaでは、マスプロモーションのKPIに対して施策の効果を検証、説明する際にもリサーチデータを駆使しているのだという。具体的には、“新規ユーザーによるLTV”を効果として重視した場合に施策としてROIが見合うのかを推定するモデルを構築。五つのモデルに沿ってデータを算出していくことで、マスプロモーションの広告効果を定量的に説明できるようにしていると村口氏は語る。
では、その五つのモデルとは具体的にどのようなものなのだろうか?川口氏は用いるべき順にモデルの仕組みを説明した。
一つ目のモデルは、「テレビCMの世帯GRPから広告認知率」を推定するものだ。
縦軸が広告認知率、横軸はテレビCMのGRP。上の青い線はタレントを起用した場合、下のオレンジの線はタレントを起用しなかった場合を示している
具体的には、まず複数の地方都市でテレビCMの放映と市場調査を実施。市場調査から得た各都市の広告認知率と、外部パートナーから得た各都市でのテレビCM世帯GRPを取得し、上図のようにプロットして、二つのデータの相関性を可視化する。タレントの出演有無によってグラフを分けることでそのアテンションの違いも加味しながら、テレビCMの投下量によって獲得できる認知量を推定できるようにするのだという。
