消費者に届くコミュニケーションのキーワードは「共感」
今回紹介する書籍は『顧客を惹きつけるストーリーマーケティング 心に残る共感の作り方』。著者は、アトムストーリーで代表取締役を務める村上賢太氏です。
村上氏は、テレビ番組でドキュメンタリーディレクターを経験後、2013年にアニメーション制作に特化したアトムストーリーを設立。現在は同社で、法人向けのPR・ブランディングムービー制作事業や、個人向けのウェディング事業を展開しています。
SNSを通じて欲しい商品やサービスを自ら探す行動がますます多くの消費者に浸透する中、「従来のマーケティング手法、コミュニケーション設計で成果が上がりにくくなっている」「ブランドの姿勢として抜本的な変化が必要かもしれない」と感じる方も多いではないでしょうか。
この課題を解決するためのキーワードとして、「共感」の創出が大切であると村上氏は語ります。
本書では、これまで数多くの企業のブランディング支援を行ってきた村上氏が、消費者の共感を生み出す「ストーリーマーケティング」について解説。消費者に届くコミュニケーション設計のヒントを共有しています。
4ヵ月で累計100万回再生 TikTokを活用した事例
本書で村上氏は、従来のマーケティング手法とストーリーマーケティングを比較。SNS時代のマーケティング戦略に求められる五つの要素を整理しています。
たとえば、「双方向のコミュニケーション」がその一つです。消費者からのブランドへの愛着を深める上では、ブランドのストーリーを適切に伝える必要があるのは事実。そのために動画クリエイティブを用意し、ブランドが自ら「ストーリー仕立てで説明する」といった施策を行う企業も少なくないでしょう。しかしそれではストーリーマーケティングとは呼べないと村上氏は言います。
消費者からの共感を生むために重要だと言うのが、「消費者視点でのストーリー作り」です。
具体的にどのようなストーリー作りであれば、消費者視点と言えるのでしょうか? 成功事例の一つとして本書で紹介されているのが、肥料や農薬などの製造・販売を手掛けるハイポネックスジャパンによるTikTokの活用戦略です。
若年層へのアプローチを目的にTikTokを活用していた同社では、より深い共感を得るためにターゲット層が植物や園芸に対して知りたがっているキーワードを調査しました。そしてその結果を基に、その結果を基に、コンテンツの内容を「植物を初めて育てる人向け」に再設定し、消費者視点で彼らを支えるブランドとしてのストーリーを作るべく発信したところ、伸び悩んでいた再生回数がわずか4ヵ月で累計100万回を達成。共感や購入報告のコメントなども急増したと村上氏は説明しています。
同社の取り組みから、ターゲットが求めている内容をきちんと把握し、それに寄り添ったストーリーを構築することが、「共感を生むストーリーマーケティング」には必要であるとわかります。
本書ではこのような事例を複数交えながら、ストーリーマーケティングの理論や手法をわかりやすく解説しています。
自社の商品・サービスの魅力が消費者に正しく伝えられていないとお悩みの方や、ユーザーエンゲージメントを強化したいとお考えの方にお薦めの書籍です。コミュニケーションの戦略やその新たな施策を考える上で、参考にしてみてはいかがでしょうか?