「自己解決率」を改善するPDCAサイクルとは
──どういったKPIを設定すればいいのでしょうか?
「自己解決率」という新たなKPIを提唱しています。自己解決率とは、顧客がトラブルや疑問を自分で解決できた割合を示す割合で、「正当回答閲覧数」÷「顧客が解決したい疑問数」で計算します。これまでも、カスタマーサポートへの問い合わせ内容を基にFAQを改善するケースはあったと思いますが、改善による効果が測定できませんでした。数値化ができないゆえに、力を入れられなかった領域だったのです。

自己解決率を向上するためには、検索を起点とし、心理データによる「行動分析」を行った上で、コンテンツを充足し導線を改善します。そして疑問・困りごとが解決されたか、反応を確認するPDCAサイクルを回すのです。
──ナレッジジャーニーが効果を発揮しやすいのは、どのような企業ですか。
たとえば、ECサイトを運営する企業、金融機関、多店舗展開する企業など、顧客と継続的な関係を構築し、顧客満足度が経営にクリティカルな影響を及ぼす企業に適しています。また、サブスクリプション型やリテンションビジネスを展開する企業にも幅広く活用できます。
LIXILではマーケ部門にサービス改革推進部を設置
──近年は、CXの改善に取り組む企業は増えてはいるものの、カスタマーサポート部門とマーケティング部門が縦割りで業務に取り組む企業が多いです。また、カスタマーサポート部門の改善もコスト削減の文脈で捉えられがちで、マーケティング部門と協働するイメージを持ちづらいのではないでしょうか。
大風呂敷を広げると、ナレッジジャーニーを取り入れることで、カスタマーサポート部門とマーケティング部門の垣根を取り払えると考えています。両部門が、同じデータに基づいて改善サイクルを回せるようになるからです。
実際に両部門が連携し、自己解決モデルに移行している企業も増えています。たとえば住宅設備機器メーカーのLIXILでは、マーケティング部門にお客さま窓口を管掌するカスタマーサービス統括部があり、サービス改革推進部が設置されています。ここでは、ナレッジジャーニーを取り入れた顧客満足度の改善とコスト削減に取り組んでいます。
近年同社では、リテンションビジネスにも力を入れており、顧客満足度が上がらないために離脱に至っているのではないか、という課題意識がありました。

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自己解決システムを導入し、分析と計測を中心とした改善サイクルを確立した結果、FAQの満足度を示すエンゲージメント率が41.4%から68.9%に向上、アンケート解決率が27.0%から65.4%に改善するなど、効果が出ています。加えて、VOCの分析によって製品の改善にもつなげています。
──最後に、今後の展望を教えてください。
私たちは、既にサービスにAIを組み込んでいますが、企業のサポート担当者がより効率的にナレッジを構築・改善できるようにするため「AIエージェント」の開発にも力を入れています。
具体的には、FAQの構築、問い合わせ内容のクラスター分析、回答の執筆などをAIエージェントが担ってくれるようにしていきたいと考えています。これらは年内にはリリースする計画です。今後も、顧客の疑問を解消するとともに、マーケターやカスタマーサポートの人たちの困りごとをなくしていきたいです。
自己解決モデルを体系化した「ナレッジジャーニー」の全容はこちらから!
Helpfeelがこれまで600サイト以上(2025年3月末時点)の自己解決率向上や顧客体験の改善をサポートしてきた中で見つけた、多くの企業が抱える共通の課題とそれを解決するための独自のノウハウを1冊にまとめました。カスタマーサポートの新しい教科書ともいえる全58ページの最新メソッドブックです。Helpfeel公式サイトより無料ダウンロードできます。