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『MarkeZine』(雑誌)

第114号(2025年6月 最終号)
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広告産業のパーパスを考える

なぜオールナイトニッポンはV字回復したのか。ラジオだけにある緩やかなコミュニティとコンテンツ戦略

ラジオと広告の違いは「下心」と「数字文化」の有無?

藤平:近しい論点な気もするのですが、僕が『今、ラジオ全盛期』を読んで思ったのは、「ラジオには下心がない(見えない)」ということでした。

 パーソナルなメディアだった頃から間口が広がり、エンタメ領域でも最旬な方たちをコミュニティの中心に据え、超リッチなコンテンツを配信し、広告・イベント・グッズ……とマルチメディアでコンテンツ展開もしている。企業が同じことをやったら、かなり気を付けても、鼻息が荒く見えてしまう確率が高いと思います。それなのに、オールナイトニッポンはビジネス的に狙いにいっている感(=下心)が見えないんです。

 もちろん、マーケティングなのかコンテンツなのか、といったそもそもの違いはあると思います。ただ、それだけで整理できる話でもない気がしていて。冨山さんたちの「ラジオが好き」という作り手の気持ちが、何かしらポジティブに作用しているんでしょうか?

冨山:前提として、「リスナーファースト」という気持ちが強いかもしれません。たしかに、番組でタイアップコーナーがあったり、番組イベントを開催したりなど、ビジネスとしてのやりようはあるのですが、「リスナーの皆さんがどう感じるか」が非常に重要です。

藤平:「ユーザーファースト」が掲げられているのはよく見ますが、ラジオの場合は「コミュニティに受け入れてもらえるか」の視点が成熟していて、かつ徹底されているんでしょうね。

冨山:あと、ラジオは現代の数字文化からうまく逃げられているのもあるかもしれません。再生回数を追いかけるようになると、「誰々が〇〇に苦言!」とか「〇〇さんの秘密を暴露」みたいな方向へ行ってしまうように思います。100万人に聴かせることを目指すのではなく、10万人に狭く深く刺さればいいと範囲を定められるのも、「数字文化」や「消費が激しいエンタメ領域」と程よい距離感を取れているからだと思います。

オールナイトニッポンで企業が「お客様扱い」をされないために

藤平:今日の対談で印象的だったのは、「ファンダムと(ラジオ的な)コミュニティは全く異なる」ということです。広告業界では、ファンダムをハックするといった表現とともに、様々なマーケティング施策が展開されています。

 代表的なファンダムは、やはりアイドルグループです。ファンダムは優しいので、たしかにそこでのコミュニケーションは受容されるのですが、「(広告の)下心」が見え隠れしてしまうことに課題感を持っていました。オールナイトニッポンという番組をプロモーションで活用させていただく際も、オールナイトニッポンを「借りる」「乗っかる」といった態度でタイアップを企画すると失敗するんでしょうね。今日の対談でいくつかヒントが見えてきました。

冨山:スポンサーの皆さんにもお話させていただくのですが、ラジオの文脈や番組で盛り上がっていることに乗っていただくほうが、結果的においしくなるケースが多いです。ラジオ広告の捉え方も「情報」と「認知」の世界から一歩進んで、番組、パーソナリティ、リスナー、そしてスポンサーさんが仲間になって、一緒に盛り上げていくような企画を色々作っていきたいと思っています。

藤平:オールナイトニッポンという番組を活用させていただくプロモーション企画は、オープンなコミュニティに下心なく参加していくという意味で、ブランディングやマーケティングにおける本質的なテーマと共通する部分がある気がします。個人的に考えを深めつつ、具体的なアイデアをぜひご相談させてください。本日はありがとうございました!

広告産業のパーパス:藤平の仮説キーワード(2025年7月時点)

好きなように/受容される――「広く・告げる」発想からの脱却

・ブランドが社会に受容される「下心のない物語」の設計

・集合知&過剰なパーソナライズからの脱却

・ブランドを中核にした「緩いコミュニティ(たまり場)の形成

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/15 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49382

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