コロナ禍に高まった「インナーケア×切り替えスイッチ」需要
MZ:コロナ禍の生活習慣や考え方の変化によって、セルフケアのニーズが高まったと一般的に言われています。ドットミーでもそうした変化を捉えていますか。
井手:はい。コロナ前後で消費者意識は大きく変化していると感じます。具体的には、コロナ以前はメイクなど「外側の美容」に意識を向けていたのに対して、コロナ以後は「内側の美容」つまりインナーケアへの関心が高まっていきました。中でも、サプリメントのようなケミカルなものではなく、白湯のように日常に取り入れやすい自然体な商品がヒットしている傾向に注目してきました。
加えて需要が高まったのは「切り替えスイッチ」。元々多忙な社会人の悩みだった「切り替え」ですが、コロナ禍に入ってテレワークが広まったことにより、「自分で自分のことをコントロールしなければならない」状況は増えていきました。Cycle.meの商品もこのニーズを背景に、時間帯ごとにスイッチのオン・オフを切り替えるなど、生活のメリハリを彩る提案をしてきました。

MZ:インナーケア市場は今後も拡大していきそうですね。
井手:確実に伸びていく市場だと思います。ただ「外側の美容だけでなく、内側のケアも大事」と気づき始めている方が増えている一方で、実際にはどんなケアをすればいいかイメージできていない方も多く、商品もまだまだ少ないのが現状です。
また、SNSなどでバズる情報が栄養学的には偏った情報であるケースも多く、高まっていくニーズに正しく応えられる商品をどう生み出していけるかが、当社としても市場全体としても、これからの挑戦になっていくでしょう。
「思ったよりおいしい」の反響多数!商品開発は徹底的なインサイト調査から
MZ:Cycle.meの展開を始めて以降、お客様からの反響はいかがでしょうか。
井手:一番多いのが「思ったよりおいしかった」という率直な声ですね。やはり「健康食品はおいしくないもの」という固定概念がある中で、おいしさにこだわったCycle.meでそのような反響をいただけることは、嬉しい限りです。「好きだから食べているけれど、実は健康にいい」と思っていただけるブランドの土台は、しっかりと固まってきたと感じます。
MZ:狙い通りの反響があったのですね。定量面でも成果を測っていますか。
井手:はい、おかげさまで順調に推移しています。たとえば尖ったコンセプトの商品を販売する際は、クラウドファンディングサイト「Makuake」を活用してテストマーケティングしています。ゼリープラスの時は、初日に1,000本ほどの販売目標としていたところ、実際には初日で1万本以上と予想の10倍を超える売れ行きがあり、手応えを感じましたね。
MZ:お話を聞いていると巧みにインサイトを深掘りして商品に落とし込んでいると感じますが、秘訣はあるのでしょうか。
井手:当社には「インサイトチーム」という、AIによるSNSマクロ分析からN=1リサーチ、一般的なWeb定量調査を集中して行う専門組織を三井物産や博報堂と連携しながら運用し、様々な調査で得た消費者の声を構造的にとらえた上で、企画に活かしています。商品開発はあくまで生活者インサイトが起点。消費者の考えを構造的に把握し、これまでになかった商品が作れないか日々ワンテーブルで議論を重ねています。
また、Cycle.meは延べ4万人にSNSをフォローいただいていますが、有志の700名程度の方が「サイクルミーサロン」というコミュニティに参画くださり、定期的なリサーチや試食会に協力いただいています。毎月お客様がオフィスの席で新商品の試作品を評価していたり、時には既存商品に厳しい声もいただいたりしますが、リアルなファンの声を商品改善に反映できる貴重な機会となっていますね。