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AI時代のBtoBマーケは「意思」が左右する。独立した富家氏が説く、インハウスケイパビリティの重要性

AI時代の若手マーケターに必要なのは「後輩力」

――AiKAGIでは、組織メンバー、つまり若手・中堅のBtoBマーケターへの支援も提供するとのことですが、今、若手マーケターに伝えたいことがあるとしたらどんなことですか。

富家:正直に言うと、今の若手マーケターは本当に厳しい時代を生きていると思います。特に経験3年未満の層は、AIに勝てていません。上司からすれば、自分でAIを使ったほうが速くて質も高い。「育てたい」と思わせる存在でなければ、育成の優先順位は上がらないのが現実です。だから、まず自分に問いかけてほしいのは、「あなたは上司に愛されていますか?」ということです。

 また、「業務の中に学びを取り入れること」も重要です。AIが作業を代替できるようになった今、1時間手を動かすより、1時間学ぶほうが、KPIに与えるインパクトの期待値が大きくなっています。たとえばメルマガを書く前に「良いメルマガとは何か」を学んでから取り組む。With AI時代では、その1時間の学びが、成果の差を分ける要素になります。裏を返せば、AIの登場で楽になるかと思いきや、これまで以上に、日々学んでいるのかがシビアに問われるようになりました。

 これからの若手は、「AIに負けている」という現実から出発しなければなりません。その上で、“教えてもらえる力”“素直にどんどん学ぶ力”を磨く必要があります。僕はこれを「後輩力」と呼んでいます。

画像を説明するテキストなくても可

――一言でいうと、「愛されろ、勉強しろ」、ということになるでしょうか。若手マーケターが厳しい時代を乗り越えていくためのアドバイスはありますか?

富家:学ばないといけないと言いましたが、人は義務感だけでは動けません。「やりたいこと」がないといけないんです。その「やりたいこと」が、個人の欲求を叶えるわがままではなく、組織の成果に紐づいている状態が理想です。

 本来、その紐づけはマネージャーの仕事なのですが、全員分やるのは現実的ではない。だからセルフマネジメントとして、自分で接続していくことが求められている感じがします。「やりたくないけれど、やらなければいけないこと」がいっぱいあるのなら、いっそのこと捨てて、自分が本気でやりたいことに真っ直ぐ向かう。そして、やりたいことの中にある「わからないこと」をAIの力を借りながら解消していくほうが、スキルもつき、キャリアの価値も上がっていくのではないでしょうか。

「BtoBマーケター」を経営者と並ぶ肩書きに

――実際に起業してみて感じたことを教えてください。

富家:BtoBマーケティングは、突き詰めれば商売そのものです。そのため、経営視点を持つ重要性は認識していたつもりでしたが、実際に経営者になって自分で判断してみると、その重みやスピード感がまったく違いました。BtoBマーケターが等しく「私は経営者です」と名乗れるくらいにまで経営への解像度を上げると、事業の見立てかたも意思決定も、大きく変わるだろうと確信しました。

 だからこそ、経営に関心のあるBtoBマーケターが「経営するとはどういうことなのか」の解像度を上げていけるよう、僕が今経験していることを、一次情報をありのまま、どんどん発信していければと思っています。

 また、僕はXのプロフィールに「AiKAGI CEO/BtoBマーケター」と併記しています。BtoBマーケターという肩書きが、「CEO」や「代表取締役」と並ぶものであってほしい、という願いも込めています。

――最後に、今後の展望を教えてください。

富家:今のAIの進化を見ていると、AIは決して人の仕事を奪うのではなく、むしろ逆だと思います。AIを駆使して事業を前進させられる「スーパーBtoBマーケター」が一人いれば会社が勝つ時代が来るでしょうし、そういうマーケターが多い会社ほど、競争力が高まっていくはずです。

 そうしたマーケターが育つには“学びの場”が必要なのですが、現実には、自分よりもBtoBマーケティングに詳しい上司がいるというマーケターは、すごく少ない。加えて、BtoBマーケティングの全体像を体系化して理解するために必要な経験が、特定の事業や組織だけに所属するとどうしても偏ってしまいます。そのため僕が、BtoBマーケターが成長するのに必要な支援を、会社として行えるプレイヤーでありたいと思います。まだ構想の段階ですが、日本で活躍するBtoBマーケターが1人でも増えるように、eラーニングだけでなく、体験型のグループワークショップや、有識者や参加者同士の1on1なども組み合わせたコミュニティスクールを開講するつもりです。

――これからが楽しみですね。本日はありがとうございました。

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株式会社AiKAGI 代表取締役 CEO 富家 翔平氏

大手通販会社のマーケティング、広告代理店にてマーケティングコンサルタントを経験。その後、コニカミノルタジャパンにて、営業改革プロジェクト×マーケティング組織立ち上げを推進。マーケティング企画部 部長として、事業部・全社マーケティング組織の責任者を務めた。2023年秋よりEVeMに参画し、実践者のひとりとして、マーケティングに「マネジメントの力」を掛け合わせた成果創出を支援。2025年10月にAiKAGIを創業。著書に『最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド』(翔泳社)

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この記事の著者

こまき あゆこ(コマキ アユコ)

ライター。AI開発を行う会社のbizdevとして働きながら、ライティング業・大学院で研究活動をしています。
連絡先: komakiayuko@gmail.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

MarkeZine副編集長。1993年生まれ、島根県出身。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/12/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50092

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