自社サービスにAIを組み込むときの、壁別の設計ポイント
ここまで見てきた非利用者の実態を踏まえ、自社の商品・サービスにAI機能を搭載・活用しようとするマーケターは何に気を付けて設計すべきなのかを考えたい。
重要なのは、生活者の多くが「AIを使うこと」自体にはまだ価値を感じていない、という前提に立つことだ。「AIを組み込めば歓迎される」とは限らない。また非利用者の中でもまず優先すべきは、すでに興味やイメージを持つ未理解層・未体験層を意識した設計である。そのうえで意識したいポイントを、以下の4点に整理した。
ポイント1:AIを前面に出さず「タスク解決」として実装する
未利用者にとって重要なのは「AIを使うこと」ではなく、「面倒な作業が終わること」「調べものが早く済むこと」「判断材料が整理されること」だ。機能を「AI搭載」と大きく謳うより、既存の体験の中に自然に埋め込み、結果として楽になる形にする。訴求の主語をAIではなく生活タスクに置くことが、未利用者への入り口になる。
ポイント2:未理解層には説明より「最初の一問」を用意する
何ができるかわからない層に機能一覧を説明しても届かない。「旅行の計画を立てて」「このメールを丁寧に直して」「冷蔵庫の食材で献立を考えて」といったプリセットの質問例やテンプレートを実装し、入力の入り口をこちらから差し出す。この層が期待しているのは、AIがユーザーの意図を確認しながら、質問を引き出してくれる設計である。
ポイント3:未体験層には登録ハードルを下げ、利用シーンを具体化する
きっかけの不在で止まっている層には、登録やアプリ導入を挟まずワンクリックで試せるようなトライアルの導線が効く。加えて、店頭・アプリ内でのデモ、利用シーンの動画など「実際に使っている場面を目にする機会」を設計に組み込むことが、初回利用につながる。
ポイント4:無関心層は狙わず、標準搭載で自然に触れさせる
無関心層は、広告や啓蒙で短期的に動かせる対象ではない。標準搭載やデフォルト化など、環境側に組み込んで自然に触れる状態を作ることが現実的だ。ただし前提が2つある。AIを使わなくてもタスクが完結する選択肢を残すこと、AIが使われていることを明示すること。そのうえで、自然に触れられる接点を用意したい。
第1回では、生成AIを使う33%の中に「AIとの付き合い方」で分かれる6つのタイプがあることを分析した。そして今回、使わない67%もまた、越えられずにいる壁の質によって4つの層に分類されることが分かった。
利用者を「どう付き合っているか」で、非利用者を「どの壁の前にいるか」で捉える。このように生活者とAIの関係性を多面的に捉えることが、AIを自社のプロダクトやコミュニケーションに組み込むうえで重要となってくる。自社サービスへのAI搭載を「どの壁の前にいる誰に、どう自然に届けるか」も意識して設計することが、非利用者を味方につける一歩となる。
本連載では、AI×生活者の実態や関係性を様々な調査やデータから解き明かしていく。次回のテーマは「生活文脈が決める、AIの使いどころ」。AIの使い方を決めるのは、年齢や性別よりも「生活の文脈」だ。Z世代、ビジネスパーソン、主婦層、シニア層などライフステージごとに異なるAI活用のリアルな実態を明らかにする。
【調査概要】
<定量調査>
調査名:AI時代の生活者調査
調査対象者:全国15〜79歳男女
サンプル数:
-事前調査 30,000サンプル(性年代の人口構成比に合わせて割付回収)
-本調査 10,300サンプル(生成AI現利用者5,150サンプル、離脱層515サンプル、未利用者層4,635サンプルで割付回収)
調査方法:インターネット調査
調査時期:2026年5月27日~6月1日
調査委託先:株式会社マクロミル
企画・分析:QO株式会社
<定性調査>
調査名:生成AIの利用に関するAIインタビュー調査
調査対象者:全国15~79歳男女
サンプル数:生成AI利用者106サンプル/生成AI未利用者及び離脱者 72サンプル
調査方法:AIインタビュー調査(AIが生活者に対してモデレートを行う形式のデプスインタビュー)
調査時期:2026年6月26日~6月29日
調査委託先:株式会社powのSpark Researchを使用
企画・分析:QO株式会社
