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四家正紀のネオコミュニケーション遊談

CGM時代のパイオニア「関心空間」誕生秘話(前編)


「コンテンツ」ではなく「コンテクスト」志向

四家
こうして、ご自身の音楽コンテンツから発想されて、飛び込んだマルチメディアとの世界はどうでした?
前田
とても不自由な媒体でした。インタラクティブという言葉に惹かれたのに、予定調和されたコンテンツしかつくれない。グルーブ感がない。
四家
それは、インタラクションがないということ?
前田
ええーと、分岐小説とかあるんですけど。
四家
はいはい、途中で選択肢を選ぶやつ。ハイパーカードで作ってあったり。
前田
そうそう、やってみたんですけど、結局あらかじめ決まったコミュニケーションしかできないんですよね。
四家
コミュニケーションというか、新しい体験ができるコンテンツということだったと思うのですが、 それだったらファミコンのRPGの流れはあったわけで、マルチメディアと言っても、結局どこまでいっても「コンテンツ」だったんじゃないかと。
前田
そうです。なので、ある時からコンテンツでなくコンテクストを志向するようになったのです。 そこで94年にインターネットと出会って、これだ!と思った訳です。
四家
どのへんでしょうか、「これだ!」と思われたのは。
前田
なんというのかな、コミュニケーションの起点がいくらでもつくれる感じがしたんです。それまであったパソコン通信のフォーラムだと、管理人さんがいて、特定の分野の話題しかできない訳じゃないですか。
四家
はいはい。中央集権型というと大げさかな。実際、パソコン通信は構造もクライアント&サーバ型だし。
前田
そう、分散的なとこが惹かれた。あと時分割処理というのか、いろんな会話を同時にできるマルチタスクといった方がいいのかな。メールで仕事しながら、趣味の話をチャットでできるとか。
四家
そうか今では当たり前だけど、メールで仕事しながら、趣味の話をチャットでできなかったんだ。忘れてた。

プロバイダがいない時代に、Webを提案していた

前田
某社のHPを提案する機会があって、タモリの笑っていいともテレフォンショッキングのミュージシャン版をネットでする企画を思いついたんです。
四家
へえー。
前田
そんでもって紹介の権限はタモリに集中しなくて、各ミュージシャンにも与える。つまり今でいうSNSです。
四家
それは、一般の人にはコンテンツとして提供されるわけですよね? ミュージシャン同士の会話というかタモリとゲストのトークみたいなものが。
前田
そういうイメージでした。 ただ94年でしたので、仕事としては成立せず。もったいないので、友人のプログラマと一緒につくったのが「HumanWeb」という作品でした。
四家
そもそも94年にWebサイト提案していることがすごいですけどね。アクセスできる人がほとんどいないでしょう(笑)。
前田
そうなんです。ミュージシャンって貧乏だからアクセスできる環境ともっとも遠いユーザだったんです(^^;
四家
あはは。でも94年ってプロバイダという業態がまだほとんどない時期ですよね。

ネットの美味しいところを求めた結果…、関心空間誕生!

前田
その後、これらの人間関係をJavaで視覚化する「Small World Connection」(1998年、アルスエレクトロニカに出品)という作品をつくったり、あくまで趣味で活動をしていたのですが、なんとか仕事にできないものかと思って始めたプロジェクトが関心空間なんです
四家
マルチメディア作りながら、そこで満たされないものをコミュニケーションによるコンテクストづくりに向けていたと。
前田
もうその頃はマルチメディアでなく、普通のWeb屋さんでしたけどね。
四家
なるほど。つまりインターネットにグッと来たけど、通常のWebではグルーブ感が足らないから、満たされなかったんだ。その満たされなかった部分が、いつか関心空間に結実したというか。
前田
95年頃のインターネットはつながっているだけでグルーブ感を感じましたけど、2000年ぐらいになるとさすがに大きくなりすぎてグルーブ感がなくなり始めていましたね。
四家
あー、そういうの大きいですよね。 実はいま、ブログのグループ感が落ちてきたなあと…。これは、まあいいや。
前田
なので、関心空間に昔のインターネットの美味しいところだけ詰め込めないかなーと思ったのは確かです。
四家
前田さんがインターネットと出会ったときの初期衝動みたいなものかもしれませんね。
前田
そうですね。分散的で、話しが飛びまくるのも私の資質からですし(笑)。
四家
分散的な資質ってあるんでしょうね。 「個人ホームページ」の時代、つまりブログ以前は分散的な資質って損だったんですよ。なぜならコンテンツが分散的になると、アクセスが集まらないから(笑)。
前田
そうですね、いまも損ですよ(笑)
四家
人間っていろいろ好きなことあるはずなのに、いろんなテーマを取り上げるより「欧州サッカーだけを扱ったページ」のほうが個人Webサイトのアクセスは集まる。この「分散的な損」については関心空間とブログでずいぶん解消された気がします。それも含めて関心空間はブログの先を行っていた洗練された「分散型」コミュニティシステムだと思います。
前田
そうですね。今に雑誌の編集者やマーケッターのように、ネットの世界でもコンテクストを編むことで食べていける職業ができるんじゃないかって思っています。
四家
それ、夢だなあ(笑)。
前田
私も老後はそうなりたい(笑)。

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この記事の著者

四家 正紀(シケ マサノリ)

株式会社カレン次世代ビジネスリサーチ室長。インターネット広告の草創期からWebマーケティングに携わり、現在はカレンにて次世代販促コミュニケーションについての研究活動と、ブログマーケティング・ブロガーリレーションズ案件のプロデューサーとして活躍。寄稿、講演多数。 ブログ カレン次世代ビジネスリサーチ室ブログ

著書

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/09/01 16:43 https://markezine.jp/article/detail/98

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