新指標TCPAの概念
ここまで、間接効果の重要性とその価値基準のあいまいさを確認してきたが、それを解決する、新たな指標となるのがTCPAである。
「すごい単純です。単純だけど意外とこれは盲点だった気がします」と中川氏が形容するように、実はTCPAという指標の概念はごくシンプルだ。
TCPAはCPAの前にTotalのTを足したもの。
CPAではコンバージョンに結びついた直接の広告コストだけで計算されるのに対して、TCPAではコンバージョンに至るまでに踏んできた広告のコストまで含めて計算される。
つまり、コンバージョンに至るまでの過程で関わった各広告コストを全て、そのコンバージョンにかかったコストとして計上するということだ。したがって、コスト、効果も全て計上した上で判断する計算方法なので、広告の評価は、直接効果に加え間接効果の利益を盛り込んだ形で判断される、より全体的な評価となる。
TCPAを指標として採用すると、いくらCPAが安くてもその前に高い広告をクリックして来ていれば、TCPAは高くなる。より具体的にCPAとTCPAを比較すれば、バナーやビッグワードなどアシスト系の広告では、間接効果の差し引きでTCPAは安くなる。
逆に、ミドルワードなど獲得系の広告は、アシストされる側なのでTCPAは高くなるといった具合だ。つまり、TCPAは複数の広告が絡む場合のコストと成果を再配分に成功していると言えよう。
TCPAが可能にするマーケティング戦略の新地平
そして、中川氏はTCPAの意義として「ここで最も重要なことは、直接効果と間接効果を一緒くたにすることで、間接効果まで含んだ広告の効果を一次元のスケールに落とせること。それが対コスト効率で算出できること」と語った。
なぜなら、先に触れた広告分析のマトリクス(「アシストが多い少ない」を縦軸に、「直接のコンバージョンが多い少ない」を横軸にとる)から一歩進んで、横軸にTCPA(対コスト効率)を、縦軸には新たに、広告から生まれる利益ボリューム(量)をとるマトリクスを組むことができるからだ。ここまでくると、さまざまな最適化手法が考えられる。
この新しいマトリクスが可能であることは、効率と量の関係を簡単に計算できることを意味している。最適化を簡単に計算できる基のデータセットができたわけだ。
例えば、ブランドのローンチ時や競合に負けられないここぞというときなど、多少コストをかけても量をとりたい場合、反対にブランドのローンチが済み落ち着いて、量よりコストを抑えて効率的に運営したい場合、それぞれのプランニングにそぐわない広告を簡単に選り出し、広告文や導線の見直しといった改善策をとれるようになる。
このようにTCPAはマーケティング戦略を全体としてより最適化していく可能性を秘めている。
進化していく「Attribution Management」
最後に中川氏は、TCPAも含んだ「Attribution Management」の展望を語った。アメリカではポストインプレッションを計算に入れたり、コンバージョンに至るまでの広告に順序でコストの重み付けをしたりと、さらに技術が進歩していると海外の事情にも触れ、「TCPAも可能性を秘めた、CPAより奥深いものではあるが、まだまだ獲得系広告の指標の一つ。認知やリピートに関する効果をも網羅した指標を目指して鋭意研究中です」と意欲を表し、講演を締めくくった。