日本の動画広告の課題は「リーチ」と「メジャメント」
いち早く動画広告に取り組んでいたオムニバス。2013年1月以降、同社が携わった動画広告キャンペーン数は約1年半で累計300キャンペーン、2億ストリームを突破している。
そのキャンペーンの内訳を見てみると、「テレビCMを併用しているキャンペーン」(48.9%)と「オンライン動画のみのキャンペーン」(51.1%)と約半々に。広告主の売り上げ規模としては、500億円以上が37%、1,000億円以上が27.2%を占めており、大手広告主の広告出稿が目立つ。また広告主業種では、情報通信系企業や製造業で割合が高いが、それ以外の業種については偏りもなく、様々な業種で動画広告が使用されていることが伺える。
同社が約1年半にわたって行ってきた動画広告事業の結果を受け、日本における動画広告の課題と対策について「日本の動画広告の課題は、まず配信する枠となる『リーチ』、そして何をもってよしとするかという『メジャメントが足りていないこと』にある」と山本氏は指摘する。
課題その1:リーチ
コムスコア社の調査によると、2014年7月にオンライン動画サイトに約5,920万人に上るユーザーが滞在しているという。かなり多くの閲覧者がいるものの、YouTube以外の動画メディアの認知はまだ十分とはいえず、「広告主が出したくなるような『プレミアム感』のある動画サイトの市場感を作っていく必要がある」と山本氏は語る。
そこでオムニバスは動画広告に特化した配信プラットフォーム『Omnibus Video Exchange』(以下、OVX)を構築。すでに東洋経済ONLINEやクックパッド、Ustreamといった様々な媒体へ連結を行っており、月間約1,000万ストリームのインストリーム型動画広告の在庫を保有。今後もさらに拡充させていきたいという。
課題その2:メジャメント
そして、もう1つの課題である「メジャメント」について。オムニバスでは従来の指標では十分に測定できないと考え、見せることに対する動画独自の効果指標を紹介した。それは、動画広告が何秒間再生されたかという「平均視聴秒数」、どのくらいの人数のユーザーが動画広告をどこまで閲覧したかという「完全視聴率」、そして全配信において動画が再生されたのべ時間「全視聴時間」の3点だ。
また、定量的指標とともに定性的評価も重要な指標だ。オムニバスではマクロミルの協力のもと、「動画を見た後に商品が気になるようになったか」などの態度変容アンケートを実施。今後も案件に応じて継続的に行い、動画広告の効果を可視化していきたいという。
完全視聴割合50%超&クリック率4.36%/オリックス生命保険
ここでオムニバスが数多く手がけた事例の中から、成功事例が紹介された。まず1つ目は、「オリックス生命保険」の事例だ。オリックス生命は、企業のマーケティングデータの集約プラットフォームとなるプライベートDMPを導入しており、チャレンジングな企業風土でも知られている。本事例に取り組むにあたって、テストキャンペーンでアトリビューション効果が見られたことから様々な面から効果検証を行いたい、またもともと若いユーザー中心にオンライン動画へのアクセスが増加しており、将来に向けて動画広告を活用した「勝ちパターン」を見つけたい、という2つの目的があったという。
本事例ではTubeMogulのビデオDSPと連携し、オムニバスの『OVX』でプレミアム媒体へ動画を配信。そして『Omnibus Audience Network』とマクロミルのブランドリフト調査を組み合わせて、効果を可視化させた。
すると、210万インプレッションに対して完全視聴割合が56.54%、クリック単価28円、クリック率4.36%という結果が得られた。バナー広告と比較するとケタ違いのクリック率であり、また定性効果を測定するアンケートの回答についても認知度やブランドへの意識の面で高い効果が得られた。テレビCM単独よりも動画広告のみの接触者のほうがブランドへの認知度が高く、さらにテレビCMと動画広告を組み合わせた場合が最も高いという相乗効果が顕著に見られたという。
これらを鑑み、記憶獲得コストについて見てみると、テレビCMが14.5円、動画広告が9.5円となり、効率的な記憶の獲得ができたといえるだろう。しかしどれだけ多くの人に見てもらえるかという「リーチ」の観点からは、まだまだテレビCMの方が断然広く、ミニマムな予算配分の分岐点を考える上でも「最適な予算配分」が今後の重要課題となる。