CVR、ROI重視だと市場拡大への投資ができない
清水:今あるビッグデータを分析しているだけでは、顧客の“真のインサイト”は分からないという問題意識があります。この数年はサービスデザインからのアプローチをずっと考えていて、エスノグラフィなどのフィールドワークからインサイトを探し出そうとしています。
CVRだけを重視するなら、半歩先のトレンドだけを提示すればいいのかもしれませんが、それでは先細る。どのくらい先行すべきで、そのときのROIをどう見ればいいと思いますか?

友澤:Yahoo!ショッピングやヤフオク!などのROIやコンバージョンを見ると、ユーザーは以前よりずっと刹那的な意思決定をしていますね。その瞬間に買わなければ、離脱。そうなると、リタゲが最も効率がよいということになって、販促的なチューニング勝負になります。
でもたしかにそれだけでは勝てなくて、清水さんの指摘するように先行して市場をつくるとか、ユーザーを刺激することが大事だと思います。ここはもう、完全にROIは合わないので、割り切るしかない。
藤原:トータルコストをどう合わせるか、ですね。当社もそういう考えで、積極的に新しい施策にチャレンジしています。
デジタルにはデジタルのつくり方があるはず
友澤:具体的に、どんな施策にチャレンジしているんですか?
藤原:今年はとにかく、動画です。つい先日、米の本社に行きましたが、向こうは動画制作の会社まで取り込んで、大量のWeb動画のテストを重ねていました。ターゲットごとに反応のよい動画で、まずファネル上部に人を集めて、リタゲなどで絞り込んでいく。それで全体でみてCPOを出しています。
日本でも10代向けには「モーニング娘。’16」の工藤遥さんと契約して、動画をメインに展開していきます。コンテンツの中身から売る場所まで模索して、成功の型をつくれればと。
テレビで喚起してどんどん注文が、という世界はもうないので、デジタルにはデジタルのつくり方があるはず、ということにチャレンジしている状況ですね。合わないといえば今は合わないですが、それを合う方向へ持っていく努力をしないといけない。

友澤:本当ですね。まずボリュームを出せというお題と、厳密な予算内で効果を最大化するお題は、使う筋肉がまったく違う。前者も当然、予算の制限や常識的な効果効率があるから、クリエーティビティーが要求されますよね。
実際、ラクなのは後者だと思うんです。ただ、これはプラットフォーム依存になりがちで、自分たちの収益が一瞬で外部に左右されることがある。これは相当なリスクです。だから前者のような方向で可能性を探らないといけないし、人を育てないといけないと、痛感しています。
