営業の意識や協力体制も徐々に変化してきた
――とはいえ、営業との協力体制ができているだけでも、他社の状況より先へ進んでいるのではないかと思います。現状と、直近の課題をどのように見据えられていますか?
現状は、お互いが持つ情報や危機感が恒常的にシェアされるようになりつつある、というところです。元々先端のテーマ、今で言うとAIなど新しい領域は、営業と一緒にマーケティングも案件創出のための活動を行ってきています。こういった活動を通して、それぞれがどう動けば拡大する顧客をカバーし、適切に情報を提供しながら案件化できるかを、俯瞰的に捉えられるようになってきていると思います。
もう一歩先へ進むと、営業からマーケティングへもっと注文が出てくると思っています。いや、出てきてくれないと、困りますね(笑)。国内では、営業が自分たちのフォーメーションやアプローチをもっと多様化したいという機運が生まれているので、互いに遠慮せず、より成果が上がる策をアカウントベースドマーケティングなどを含め検討、トライアルしています。海外では営業スタイルも国ごとに違い、部門横断の連携もそこまで進んでいないのですが、先行している日本の導入ノウハウを共有しながら各国のビジネスに合わせたMAツールの有効活用を模索しています。
2013年から毎年、社内および対外的に共通のマーケティングメッセージを打ち出していますが、2017年は「デジタル・コ・クリエーション」を掲げています。オンライン・オフラインを横断し、コンテンツを起点にしたコミュニケーションを図りながら、前述のデジタルマーケティングを実践して、今後も拡大が予測される非IT・現場部門の顧客へのアプローチを強化します。
ワークショップを通して顧客とともに課題を探る
――“コ(ともに)”・クリエーションは、どういったことを意味しますか?
顧客や社外パートナー企業とともに新たな価値を生み出すということです。
以前は、企業の課題が明確だったので、我々はそれに対するソリューションを提案してきました。ですが今、企業が自社の課題をはっきりとつかめていないことが増え、同時に我々のソリューション提供までのプロセスも大きく変容してきています。
生産性を上げる、事業を拡大するという大きな命題の前に、思いつく策はもうやり尽くした。一体どういうロードマップが必要なのか、どうすれば非連続の変革を起こしジャンプできるのかわからない。それは企業の状況や市場環境によって様々なので、我々もすぐにはベストアンサーを提案できません。顧客と“ともに”、まずは何が課題なのかを探り、ともに創っていく、そういう姿勢なくしては、案件化できなくなっているのが現状なのです。

そこで昨年、当本部が管轄していた浜松町のショールームを改装し、「デジタルトランスフォーメーションセンター」という名称のワークショップスタジオを開設しました。昨年既に380回のワークショップを開催し、今年も非常に人気で、8月には大阪にも開設したところです。何も決まっていない状態から、外部を交えてディスカッションしていくというのは日本人はあまり得意ではありませんが、1回やってみると企業の方もとても熱心になり、次は他部署の方を連れて来られることも多いですね。
アナログとデジタルをフル活用して顧客と併走
――デジタルでリードナーチャリングをしているなかでの、アナログな接点になっているのですね。その場合、どういった人がワークショップをファシリテートするのですか?
ワークショップで直接営業することはありませんが、その後につなげるためにはやはり当社のことをよくわかっている必要があるので、社員が担当しています。デザイン部門の専門家、販推チームのプロフェッショナル人材に、デザインアプローチのトレーニングを行って、ファシリテーターとしての教育を強化しているところです。同センターの運営もそうですが、人材育成は常に課題ですね。
――ありがとうございました。最後に、今後の展開を伺えますか?
直近では、この10月に営業連携強化のために「デマンドセンター」という組織を新設します。元々、当本部が管轄しているコールセンターのノウハウを応用して、マーケティングと営業の間を取り持つ機能を担います。実際、ホットリードになったからといってすぐに営業につないでも動けないので、顧客対応の経験を持つスタッフが実際の状況やニーズの程度を顧客にヒアリングして、より詳細に顧客プロファイルを固めてからわたすようにします。場合によっては、ワークショップのアポまで固めてから引き継いでもいい。これまでよりも緻密に顧客とコミュニケーションを図り、ロストをなくしていきたいと思います。
また、前述のデジタルトランスフォーメーションセンターでの“課題をともに探る”動きも加速させ、国内2拠点に加えて年内にアメリカ(ニューヨーク)とドイツ(ミュンヘン)にも開設する予定です。複雑化する社会の中で、我々の顧客である企業がどういう課題を解くべきなのか、その部分から併走していければと思っています。
