One to Oneの実践で、どれだけ売り上げを上乗せできるか
では現在のクロックス・ジャパンは、どのようなカスタマージャーニーを描きチーム内で共有し、Marketing CloudとCommerce Cloudを活用するのだろうか?
「私たちは、“これが弊社のカスタマージャーニーマップです”という一つの図を描き、全体で共有しているわけではありません。ですが、オンサイトマーチャントチームが常に顧客の行動を見て、ジャーニーを描き、施策を打っています。作成したジャーニーや、それに伴う施策の結果は3チーム合同の定期的な会議で共有することで、チーム内でのカスタマージャーニーに対する認識のブレを防いでいます」(木村氏)
具体的にはユーザーを見込み顧客と購買済み顧客に分け、それぞれのカスタマージャーニーを設計し、そのうえでサイト上の行動などをトリガーに、約15のシナリオを用意しているという。この数は他社と比べて決して多くないと木村氏。
「ウェルカムメールを何十種類も用意する企業もありますが、私たちはそこまでのフェーズに至っていませんし、リソースとコストのバランスがあります。一斉配信メールとOne to Oneのコンビネーションを見ながら、頃合いの良いシナリオ数に抑えています」(木村氏)
頃合いの良さとは、たとえば、一斉配信で売り上げの10割を占めていたとしよう。One to Oneマーケティングの実践でさらに2割の売上を上乗せするためにどうするかを考えるイメージだ。
「オンサイトマーチャントチームがCommerce Cloudを、デジタルマーケティングチームがMarketing Cloudを活用しています。オンサイトマーチャントチームがCommerce Cloudを介してクーポン施策を打ち、ECサイトでのクーポン利用の有無を管理します。そのデータをもとにデジタルマーケティングチームがMarketing CloudでOne to Oneのメール施策を行う。この連携で従来なら難しかった2割を獲得できるわけです」(木村氏)
サンダルの会社ではないと伝えるために
先程までは売り上げとシナリオについて触れたが、そもそもクロックスに興味を持ってもらい、ECサイトに足を運んでもらわなければ話は始まらない。
「私たちは各国と互いのジャーニーを紹介し合いますし、キャンペーンについての意見交換も欠かしません。そこでわかってきたことが、国や地域でさほど傾向に差異がないこと。ユーザーの反応のしどころは、案外どこの国も似ているということです」(木村氏)
反応の傾向がわかった時、求められるのはグローバルでの商品コンセプトをいかに日本人が理解しやすく伝えていくかだ。
「グローバルが掲げる2017年のキャッチコピーは“come as you are”。“自分らしく、私らしく”クロックスのウェアを履きこなしてほしい、という気持ちが込められています。
商品を購入したことがない人ほど、クロックス=サンダルカンパニーという印象が強いかと思います。そのため、快適に履けそうだと思っていても利用するシーンが想像できない・限られるなど、購入にハードルを感じている。
しかし、私たちは足元をこれまでになく快適に、楽しく彩ることをミッションとしており、様々なラインアップを用意しています。様々なOccasion(場面)でも快適に楽しめるクロックス、というコミュニケーションができるよう努めています」(木村氏)