これからは飲食業界もデータドリブンで
――確かに、一部を除いて飲食店ではまだまだ顧客データと利用履歴の紐付けがあまり進んでいませんね。
ECの世界では、データドリブンでPDCAを回すのが当たり前ですが、飲食業界はそうした戦略を進めるための土台がありませんでした。サブスクリプションモデルを取り入れることにより、きちんとしたアナリティクスやリタゲの考えを実現できる、ECの世界と同じスタートラインに立てたということです。
――来店データの取得方法は?
メディア「favy」のアプリに会員証機能があります。来店時にはアプリから会員バーコードを表示していただき、それをスキャナで読み取ります。既存レジシステムと自社開発ツールを組み合わせて作り上げた仕組みです。
一般に飲食店の標準的なデータ分析といえばPOSでしょう。ですが、POSデータと顧客データを正確にひもづけることは困難です。ポイントカードシステムにしても、会員全量のデータを取るのはまず不可能です。サブスクリプションモデル、会員制を取り入れることで精度の高いデータを蓄積できる構造ができたのです。
飲食店を簡単に潰さないために
――御社以外でも飲食業界のサブスクリプションモデルとして、たとえば「月額制でラーメン食べ放題」といった取り組みも一部で話題になりました。
「デカ盛り」ブームのときと同じように、定額制を話題作りに使う店舗もあるでしょうね。ただ、サブスクリプションモデルの本質的価値は、これまで申し上げてきたような収益ベースの確保や、データ蓄積にあります。
――飲食業界にサブスクリプションモデルが根付いていくために必要なこととはなんだとお考えでしょうか?
ECも最初は人力でやっていたものが、様々なツールが誕生し、自動化・効率化されてきました。その流れを、飲食業界でも作っていくことですね。
我々はデジタルマーケティングの手法が飲食業界のリアルな現場においても有効か検証し、実績を積み重ねています。今後はツールをパッケージ化し、これもサブスクリプションモデルのSaaSのような形で広めていければと思います。実際にSaaSビジネスを飲食店向けに展開するのは難しいでしょうから、カスタムメイドとコンサルティングのあわせ技で進めていくことになるでしょう。
――店舗運営の具体的な展望についてお聞かせください。
coffee mafiaも新店舗ができましたし、フランチャイズ化も検討しています。また、29ONのビジネスモデルを導入したいというお問い合わせはかなり増えていますので、具体的な支援に乗り出していきます。
――飲食店は多店舗展開により経営が悪化するということが少なくありません。御社は「飲食店が簡単に潰れない世界を創る」をビジョンに掲げています。そのビジョン実現に向けて、大切なこととはなんでしょうか?
急拡大で経営が逼迫してしまうというのも、アナリティクスがないということが大きかったでしょう。きちんとデータドリブンしていけば、本当に出店すべきか正しい判断が下せるようになります。
サブスクリプションも、会員とデータの可視化に大きく貢献できる仕組みです。「飲食店が簡単に潰れない世界」の実現に向けて、大いに機能していくことでしょう。

