通学履きシューズという新たなカテゴリーを創出
――490万足でも十分多いですが、ピークより微減というのは少子化の影響もあるのですか?

いえ、少子化の影響は感じていません。この微減は、むしろこの数年で我々が全国の販売網を少し見直し、縮小したことが理由です。地域で1足、2足売れる程度なら、EC化を進めていきたいという考えに基づいてのことです。今はECのメインチャネルはAmazonで、楽天や自社サイトも含めてEC化率は10%未満ですが、近く15%ほどに、将来的には20%程度まで伸ばす計画を立てています。ただ、やはりまだリアルチャネルのほうがずっと強いですね。その中で、相対的に瞬足のブランド力を高めるために、今リブランディングを図っているところです。 前述のように、15年前は「通学履きシューズ」というジャンルがなかったので、発売してから競合の参入も相次ぎましたが、ずっと売上としては追い風でした。はじめは小学校1〜3年生の男子に絞って展開しました。子どもたちがどんな靴を履いているのか、運動会を中心に毎年写真を撮り続けながら、そのうち女子向けも加わり、幼児も履くようになりました。2013年の10周年を境に、ライフスタイルとして学校生活を応援するブランドを打ち出し、さらに2015年には「瞬足JAPAN」として24.5cm以上の陸上競技トレーニングモデルを発売したので、カバーできる年齢層が小学校高学年やそれ以上にも広がりました。
――「瞬足JAPAN」はアッパーモデルといった位置づけですか?
端的に言えば、そうですね。どうしても4・5年生になると瞬足から離れてしまうので、これを一度詳しく調べたら、なんと「サイズがない」という理由だったことがわかりました。まったく盲点でしたね。ただ、好みはもちろん少し大人びてきますし、小さい靴のデザインを引き伸ばしたのではバランスがおかしくなるので、予算を投じてエスノグラフィ調査を徹底して行い、彼らの靴選びを調べました。
すると、ブランドには執着がなくデザインやカラーリングで選んでいて、マジックテープは子どもっぽいからひも靴がいいとか、そうした細かい点がわかってきました。つい、マーケティングは勘と経験に頼りがちですが、わからない部分の徹底したリサーチは大事ですね。今は他の商品でも調査を重視しています。
靴のプロモーションにはインフルエンサーが効く
――ちょうど3月いっぱいまで、15周年を記念したテレビCMに出演する親子を募集されていましたが、ここまでの売上にはやはりテレビCMが効いているのでしょうか?そうですね、一定の手応えはあります。スタートしたのは商品発売から2年後の2005年からですが、小学生男子が皆見ているような日曜の朝の番組に出稿しはじめたところ、一時的に品切れになるほど売れました。まさにコアユーザーに響いたという感じで、ちょうど商品の成長時期とも重なり、そこから2009年ごろの売上のピークに至るまでは販売数もそうですし、体感としても街で見かける率がどんどん高まっていきました。テレビCMは現在、ファミリー向け番組など、限られたいくつかの枠に出稿しています。
――この15年の間で、生活者の情報接触状況は大きく変わり、親世代はもちろん小学生もネットに触れる機会が増えていると思います。新商品やプロモーションの情報発信について、どう取り組まれていますか?
正直、デジタル施策はこれまで得意ではありませんでしたが、当然デジタルを駆使すべき時代だと思っています。2009年にWebサイト「瞬足クラブ」を開設し、FacebookやYouTube公式チャンネルなどでも情報提供を行っています。

実際、この4、5年で小学生のスマートフォン所有率は大きく上がりましたし、ある調査によると、小学生のなりたい職業No.1がYouTuberだったりする。瞬足は、通学履きの利用がメインで周りの目に触れるので、やはり今でも「誰々くんが履いているから欲しい」というリアルな販促効果が大きいのですが、情報の受け手としての彼らの変化は常に追っています。我々としてのSNSの活用や口コミを促す取り組みはまだまだですが、ネットにはたくさん評判をアップしてもらっているので、そうした意見を参考にするだけでなく、積極的に活用する策を検討中です。
そもそも靴は、なかなかこれという決め手になる情報源が多くない商材です。たとえばランニングシューズの世界だと、プロランナーが強力なインフルエンサーになります。世界のトップ、日本のトップ、地域のトップ、そしてチームのトップと、上の人が履くと一気に広がる。逆にいうと履かないとわからないので、オピニオンリーダーやインフルエンサーマーケティングが割と効きやすい感覚があります。子ども向けにどこまで通用するかわかりませんが、こうした情報展開も考えています。