※本記事は、2018年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』32号に掲載したものです。
タクシーの顧客体験を変えたい
JapanTaxi株式会社取締役 CMO 金 高恩(きむ・ごおん)氏
サイバーエージェント、ネットプライス、ヤフー、ファッションウォーカーで新規事業や会社の立ち上げ、プロデュース業務を担当。その後、独立して多業種の企業の事業立ち上げを経験した後、ファウンダーとして会社を立ち上げる。2015年、人々の生活に浸透している社会インフラを、ITの力を加えて進化させたいという思いからJapanTaxiへ入社。現在はJapanTaxiのCMOとして、プロモーション全般および新規事業の立ち上げを担当するほか、タクシー車両搭載の広告タブレットを展開するIRISの代表取締役社長を兼務。
――JapanTaxiのタクシー配車アプリ「全国タクシー」は、ダウンロード数500万を超えるなど、日本におけるモビリティサービスの先端を走っています。あらためて、アプリをリリースした背景をうかがえますか。
JapanTaxiの前身は、1977年創業の日交計算センターという日本交通のグループ会社で、その後日交データサービスに社名変更しています。乗務員の給与計算をはじめ、社内基幹システムの構築などタクシー業務にまつわるシステムの受託会社でした。アプリ開発に着手したのは、スマートフォンやアプリの時代が来るといち早く察知した、社長の川鍋(同社・代表取締役社長 川鍋一朗氏)のアイデアがきっかけです。
2011年に日本初のタクシー配車アプリとして、日本交通のタクシーを対象とした「日本交通タクシー配車」をリリース後、地方でも使いたいというお客さまの声や、各地の同業社さまからも協業の依頼が相次ぎ、同年に「全国タクシー」をリリースしました。現在47都道府県のお客さまに、ご利用いただいています。
会社として「全国タクシー」の事業を本格化させていくと決めたのは、2014年のこと。2015年の夏には社名をJapanTaxiへと変更し、ITベンチャーとしてスピーディなサービス開発を行う体制を整えました。私が入社したのも、この時期です。
――「全国タクシー」のネット決済機能や2018年の冬に国交省と行った「相乗りタクシー」の実証実験など、JapanTaxiはタクシーに乗るという従来の行動を大きく変えていくサービスを提供されていますね。
私たちは「移動で人を幸せに」の理念のもと、配車・決済・広告という3つの事業を柱にビジネスを展開しています。まず「全国タクシー」の配車システムは、「電話で呼ぶ・流しを捕まえる・乗り場に並ぶ」という、従来のタクシーの乗車方法に新たな選択肢をもたらしました。
さらに、クレジットカードをアプリに登録することで、到着した瞬間に決済が完了できるネット決済は、私たちの想像以上に反響を呼び、「全国タクシー」の大きなセールスポイントとなっています。公共交通機関に比べ料金が高いタクシーは、お客さまの貴重な時間をお預かりする乗り物。ネット決済は、これまで平均3分かかっていた料金の支払いを、最大限効率化しました。このように、アプリからタクシーを呼び、乗車して決済を行い、目的地で降りるというタクシーにまつわる一連の顧客体験に、私たちは新しい価値を作り出したいと考えているのです。