※本記事は、2019年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』46号に掲載したものです。
職種で「最新技術」の捉え方は違う
面白法人カヤック 企画部・VR部プロデューサー 泉 聡一氏
2012年に鎌倉で働きたい、という理由でカヤックに入社。音楽、テクノロジーに幅広い知識を持つ。NISSAN Invisible to Visibleでは、ラスベガス、上海で行われたCES2019において、XR(VR+AR)技術を用いたデモ展示コンテンツの企画・開発・運用を行う。また、TwitterのDMbotを使ったプロモーションを多く手掛けている。
――泉さんはテクノロジーに関する幅広い知識を武器に、クリエイティブな企画を考えていると聞きました。クライアントと一緒にテクノロジーを絡めたプロモーションを企画する上で、最も気を付けているポイントを教えてください。
担当者の目線に合わせて、テクノロジーを提案するように心がけています。クライアントからは「とにかく新しいものを作りたい」というオーダーをもらうことが多いのですが、実際は新しすぎてもダメなんですよね。1歩、2歩先の技術を使ってしまうと、クライアントの担当者に理解してもらいにくいし、エンドユーザーにも受け入れられにくい。
ただ、R&Dなど最先端の研究に従事している方たちと一緒に仕事する際は、2歩でも3歩でも先の話をするべきです。アドテクノロジーに詳しい方とは1歩先を、営業など現場を見ている方とは0.5歩先をなど、企画を一緒に考える人によって提案すべき技術を調整するのが重要だと考えています。
たとえばVRの場合、将来的には我々の生活にVRが浸透し、1日の大半をVR空間で過ごす人が増えていってもおかしくありません。ただ、現在そのような企画を出してもほとんどのユーザーには受け入れられないと思うんです。
一方で、R&Dで最先端テクノロジーの研究に従事している方とは、すごく先の未来を前提に話さないと逆に話が通じません。担当者がどのくらいの未来にピントを合わせているのかを理解した上で、どの技術がマッチしているのかを把握するのが非常に重要ですね。
――緒に企画を考える人がどの程度先を見据えているのか把握して企画をするのは、重要そうですね。今の時流に合わせてテクノロジーをうまく使った事例はありますか?
最近だと、TwitterDM CONTENTSというプロモーション用のサービスを開発し、いくつかの企業に提供しています。1日のうちの多くをSNSに費やす方が増えています。そのようなユーザーに向けて訴求でき、かつSNS上でプロモーションを完結できたほうが良いと思い、TwitterのDMを活用したサービスを開発しました。
たとえば、花王のヘアケアブランド「PYUAN(ピュアン)」との取り組みでは、DMを通じたチャット型のコミュニケーションで診断コンテンツを提供しました。診断コンテンツなどをWebで提供する流れが一時期流行りましたが、どうしてもWebとSNSを連動させるのが難しくシェアされていかなかったところを、Twitter上で診断からシェアまでを完結させることでより参加しやすい内容を目指しました。
――VRやARだけでなく、TwitterのDMなど既存のテクノロジーにおける新たな活用も模索しているのですね。ちなみに扱おうとしているテクノロジーが何歩先くらいかを把握するために意識していることはありますか。
一つの目安になるのは「言葉が流行り始めたかどうか」です。マスメディアなどでの取り扱われ方を注意深く観察して「このメディアで“VR”が使われているということは、読者にも浸透しているんだな」と推測しています。