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令和時代のマーケティング

ジェンダーマーケティング2.0 “配慮”から“行動”へ

ブランドに根付いたジェンダー課題設定5つのメソッド

 さて、ジェンダーマーケティング2.0を実践するための、「ブランドに根付いたジェンダー課題設定5つのメソッド」をご紹介したいと思います。これは、先述した「カンヌライオンズ グラス部門」で高い評価を受けた作品を研究して、考案したものです。本稿では、グラス部門の2019年度受賞作品を例に紹介します。

1. 社会システムや社会通念を問い直す

事例:The Tampon Book/The Female Company

 生理用品をネット販売するドイツのスタートアップThe Female Companyは、生理用品の税率が、贅沢品カテゴリーの19%(必需品は7%)であることに着目。法律がいかに男性視点で作られているかに課題をおき、法律をかいくぐって商品を販売することで、消費者を巻き込んだ抗議活動を行いました。社会ムーブメントを起こしたことにより、初めて生理用品の税率の見直しが議題に上がることとなりました。

The Tampon Book|The Female Company https://www.thefemalecompany.com/tampon-book/
The Tampon Book|The Female Company

2.偏見の根源を探す

事例:The Last Ever Issue/Gazeta.pl, Mastercard, BNP Paribas

 ポーランドはヨーロッパでもジェンダーギャップ指数が低い、男尊女卑が残る国。性教育は十分でなく、男性たちはポルノ雑誌から女性について学ぶと言われています。メディア業界の責任として、そして先進的な思想を持つブランドとして、リベラル系メディアGAZETA.PLは、2社のパートナーとともに人気ポルノ雑誌の買収と最終号の発行を通して、もう男性の性の対象物ではない、新時代の「女性の姿」をうつしだしました。ビジネス観点のリザルトとしては、GAZETA.PLへの日常的なアクセスが50%増加につながりました。

The Last Ever Issue/Gazeta.pl, Mastercard, BNP Paribas https://twojweekend.pl/en
The Last Ever Issue/Gazeta.pl, Mastercard, BNP Paribas

3.タブーの原因や影響を探る

事例:VIVA LA VULVA/Libresse

 欧州では生理用品のメジャーブランドとして知られるLibresse。新商品であるデリケートゾーン用ソープのローンチキャンペーンで着目した課題は、「女性器へのタブー視」。社会やメディアの様々なところで、女性器は消されていたり、汚いものとされたり、ついには整形手術もされています。そんな社会における女性器の扱われ方が、女性たちの体に対する自信の低下につながっているのではないかという課題意識のもと、Libresseは「すべての女性器が美しい」というメッセージを、ミュージックビデオを中心に様々なアクティベーションで発信。商品ローンチ2ヵ月でマーケットシェア33%に拡大しました。

4.歴史や伝統を問い直す

事例:Bye Bye Bikini/Miss America

 100周年を目前に控えた米国の代表的なミスコン、Miss America。時代の価値観に合わせ、”Miss America2.0”と称した大規模なリブランディングが行われ、審査基準は見た目の美しさではなく、才能、情熱、野心にアップデートされました。その方向転換を広く伝えるべく、ビキニ審査の撤廃をリブランディングの象徴とし、PR活動の中心に置く戦略をとった。結果、生まれ変わったMiss Americaは、調査によるとポジティブなBrand Sentiment(ブランドへの印象)が131%増加した。

5.無視されている存在に光を当てる

事例:First Shave/Gillette

 米国の大手カミソリブランドGillette社は、古典的な「男らしさ」の表現で知られていたブランド。しかし2018年から「男らしさを問い直す」視点から、ジェンダー課題への取り組みに力を入れ始めました。性転換により男性になった人々にスポットライトを当てたこのシリーズでは、「ヒゲを剃る」という行為を通して大人の男になった喜びをドキュメント。ツイッタートレンド1位、米国で検索されている言葉3位になるだけでなく、Havas Media調査による“2019年Most Meaningful Brands”7位にランクインしました。

 「ジェンダーは女性の問題」と思われている方が多いかもしれません。しかし、この年のグラス部門ではGilletteのように「男らしさ」を改めて問い直す事例も多く見られました。

 ジェンダーだけでなく、マーケティング活動を通して社会課題に取り組む際の成功の秘訣とは、なんでしょう。それは、ブランドに根ざした課題設定、課題に関するチームの知見、多様性のあるチーム、そして最後に、エージェンシー/クライアント関係なく、チーム全体が情熱を持って楽しくやることだと思います。ジェンダーとマーケティングという、日本ではまだまだ開拓しがいがあるこの分野に、多くの方がチャレンジされることを願います。

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この記事の著者

木下 舞耶(キノシタ マヤ)

株式会社電通 クリエーティブ・プランナー
米国生まれ、関西育ち。エマーソン大学卒業後、電通入社。コピーライター、CMプランナーを経験し、PR部門へ。PR視点を取り入れたクリエーティブ・プランナーとして、国内外の案件に従事している。入社以来、ダイバーシティ課題にも取り組み、2019年カンヌライオンズ電通セミナー“The...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/04 17:58 https://markezine.jp/article/detail/32363

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