SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

ブランドは時間をかけて生まれる

ブランドを作りたければ最低3年は同じ訴求を

――データを鵜呑みにし過ぎない以外に大事なことはありますか。

 デジタル広告は「これ好きでしょ?」と土足で踏み込んでしまう部分もあるので、それが不快にならないように気を付けています。僕は車と犬が好きなんですが、僕のスマホにこれらに関連したデジタル広告ばかりが出てきます。最近どれも似たようなアイデアが多く、ちょっと他の広告も見たいな、と思います。

――ターゲティングが優秀な分、気を付けて不快にさせてしまわないようにしなければなりませんね。

 似たジャンルの広告が届きやすいからこそ、クリエイティブですごく差が付くわけです。そこには、ブランド力を効果的に強化する広告アイデアが必要です。

――ブランド力を広告で引き上げるにはどうすれば良いのでしょうか。

 まず最低でも3年以上の時間をかけて、なぜそのブランドが存在しているのかを伝え続けることですね。ブランドは時間をかけて生まれるものです。昔から続くブランドはすべて長い時間をかけてメッセージを浸透させています。たとえば「ルイヴィトン」は何十年も「旅に最適な道具」というブランドの言い分を変えていません。四半期ごとに成果を出すことだけに注力しているとブランドは作れないと思います。

 ブランドの言い分をきっちり考えて、最低3年は変えないというのは、ブランド広告を作る上では重要です。

What to Sayを企画書に落とし込めるクリエイターを育成

――田中さんは若手社員の育成にも携わっていると聞いています。これまでにどのようなアドバイスをしてきたのでしょうか。

 What to Say(何を言うか)を深く考えることが大事だと伝えています。

 サイバーエージェントは広告配信技術などのHow to Say(どう伝えるか)に関する技術は非常に長けた会社です。結果、歴史的にHow to Sayをクライアントから求められる部分が多く、What to Sayに向き合う歴史がまだ浅いところがあります。

 僕が総合広告代理店にいたころは、社内に厳しい先輩がたくさんいて僕の企画に「何がおもしろいんだよ」とダメ出しされてずいぶんと鍛えられました。

――What to Sayを考える力は、どうすれば磨かれていくのでしょうか。

 最初に伝えているのが「アイデアからではなく、企画書から作る」ことです。課題を出すと、いきなり絵コンテやストーリーを考えてきてしまう人が多かったのですね。

 広告アイデアを作るためには、広告の目的、ターゲット、訴求したいことを自分できっちり考えることが重要です。クライアントからもブリーフで上記のことは伝えてもらえると思いますが、それが必ずしも正解とは限りません。クライアントが思っている強みを疑って、自分なりのWhat to Sayを作るためにも、企画書作りから始めることを勧めています。

 また、ブリーフを受けたら、自分でその商品やサービスが提供されている場所に行くことを勧めています。現場と現物を自分で確認しないと、クライアントや担当営業から聞こえる情報を鵜呑みにして企画するしかありません。

クリエイティブ作りが上手くいったチームは記憶する

――先ほどクリエイティブを企画する上で基本的なことは変わっていないとのことでしたが、具体的にはどのようなことを意識していますか。

 まず、出てきたアイデアの良し悪しを判断する3つの基準を設けています。1つ目は広告目的から離れていないか、2つ目はそのアイデアに必然性があるか、3つ目はそのアイデアが突き抜けておもしろいかです。

 どうやって作るかは人それぞれで正解はないと思いますが、まず受けとったブリーフを組み立て直し、広告の着地点を考えてチームと共有します。それからなるべく時間をかけてコピーや表現アイデアを考えるようにしています。日常的には体調管理とルーティンを守ることを大事にしています。

――ルーティンを守るとのことですが、具体的にどういったルーティンがあるのでしょうか。

 僕はいいアイデアを思いついたときに、「いつ」「どこで」「誰と組んだか」をなるべく記憶しています。

 たとえば、僕は車を運転しているときにいいアイデアが浮かぶことが多い。その他にも、この営業、このクリエイティブと組むと成功するといった相性もあると思います。そのルーティンやチームの組み合わせを大事にしています。

――誰と組むかまで意識しているんですね。

 そういう風にやっていると、お互いのパフォーマンスがよくなります。簡単に言えば「この人を喜ばせたい」という気持ちが一緒のほうが、良い企画が作れるんです。クライアントに対しても同じことが言えます。

次のページ
アイデアはクライアントの背丈を超えることはできない

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2020/06/25 14:30 https://markezine.jp/article/detail/33664

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング