COVID-19が推進するマーケティングDX
「あなたの会社でDXを最も推進している人は誰ですか?」これは2020年に米国で流行ったプレゼンテーションの「つかみネタ」です(図表1)。
答えは「CEOでもCTOでもCMOでもなく、COVID-19だ」というものですが、私は的を射ていると考えています。日本のBtoBマーケティングがここまで世界から遅れた理由は「必要なかった」からです。
戦後20年以上も続いた1ドル360円の為替レートなどにより、日本は世界有数の経済大国になりました。しかし、これらのアドバンテージを失った後は、ホワイトカラーの生産性の低さや意思決定の遅さなどの弱点が目立つようになり、停滞期に入ってしまいました。そんな中で日本の弱点を克服する特効薬として期待されたのがDXです。2019年に日本企業の中期経営計画の中に最も多く入っている単語がこのDXだと言われたほどです。デジタルを活用して企業を変革する、という戦略は正しかったのですが、「How」つまり戦術が不十分でした。戦術がともなわない戦略は「絵に描いた餅」です。多くの企業のDXはまさにこれでした。
そこに突然パンデミックがやってきて、誰も経験したことのない状況が世界を覆いました。しかしその中で生きていかなければなりません。そのために必要不可欠なことはデジタルの活用でした。遅々として進まなかったDXに突然強い追い風が吹いたのです。
企業全体のナレッジ引き上げが必要
ここまでお話ししてきた内容をまとめましょう。多様化した手法の中から自社に最適なマーケティングを設計し、マーケティング部門を孤立させず、新型コロナによる追い風を受けて一気にDXを実現するには、企業全体のナレッジ、つまりマーケティング偏差値を引き上げることです。マーケティング部門だけがマーケティングを理解していても、その知見を活かすことはできません。全体のナレッジレベルを上げて体質を変革できた企業だけが5年後に存在している気がしています。
