二人の著名マーケターによるアフターコロナ論
今回紹介する書籍は、『アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40』。その手腕から“V字回復請負人”と称され、現在はファミリーマートでエグゼクティブ・ディレクター、CMOを務めている足立光氏、そして、P&Gにはじまり、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースなど多くの企業でブランドを成長させ、現在Strategy Partners代表取締役、M-Force共同創業者として活動する西口一希氏による共著です。
多くの実績を持つ二人が本書で取り組んだテーマは、タイトルの通り「アフターコロナにおいて、マーケティングや経営はどう変わるか」。いま現在も多くのマーケター、経営者が頭を悩ませている議題ですが、本書では冒頭から「この問いの立て方は間違っているかもしれない」と述べられています。一体なぜでしょうか?
「アフターコロナでどう変わるか」という問いにある落とし穴
この発言から著者が示しているのは、コロナによって「実はずっと起こっていた変化が加速しただけ」という考え方です。
たとえば、リアル店舗を展開してきたアパレル企業がコロナによって苦戦を強いられている状況について、ビフォーコロナにおいても服を店舗よりもECで買う、買わずにレンタルを利用する行動が広がったり、服に対する支出やこだわりが減っていたりしていた事実から、既に起こっていた変化の加速を裏付けています。
また、外出や移動の減少もデータから見れば長期的なトレンドとして既に起こっていたことであり、コロナ禍の「外出しない生活」もウェブ会議システム、デリバリーの仕組みなどによって環境が整っていた、と見ることができるのです。
著者はこうした事実から、次のように主張しています。
コロナ前後の変化を比べるのではなく、この変化をきっかけとして、常に起こり続つづけているさまざまな社会変化、環境変化によって、何が大きく変化しているかをリアルタイムに考え、常に変化していかなければならない。だから、なんとなく今日は昨日の延長であり、明日は今日の延長であるという前提を立ててビジネスを行っていることそのものを問題視しなければならない。顧客の心理、行動の変化をリアルタイムで感じながら、戦略転換しつづけることが重要だ。(p.4)
40の論点で「変化の時代」の誤解を解く
本書では前述のように、アフターコロナを「変化が加速するきっかけ」として捉え、様々な切り口を用意しています。
特徴的なのはその見せ方。冒頭で「アフターコロナにおいて、マーケティングや経営はどう変わるか」という問いの立て方に間違いを指摘したように、誤解もしくは一義的に捉えすぎているのではないかという「論点」を挙げ、著者による見解や事例、各種フレームワークを紹介するスタイルです。
いま一般に聞かれるような「テレビなどの旧メディアはオワコンだ」「ビッグデータを持てば、最適なマーケティングが可能になる」「マーケティング戦略とは、4Pを考えることだ」「リアルで行ってきたファンづくりの施策は、オンラインで代替できる」といった主張・考え方を、論点として幅広く取り扱っています。
「コロナ関連の書籍は見飽きてしまった」という方も、コロナによる変化の時代にあっても変わらないこと、考えつづけるべきことを本書から探ってみてはいかがでしょうか。