インバウンドなMA施策は「相手の行動に思いを馳せる」ことから生まれる
最後にひとつ、MAを実践する際に気をつけたいことをお伝えします。
今はユーザーが膨大な情報を持っている時代です。HubSpotを使うと、そのユーザーの情報も集まってきます。さらにMAの施策フェイズでは、「どんな広告をクリックした」「このコンテンツをダウンロードした」「ホームページ内のどのページを見たか」など、連載の第二回でお伝えした「広告」施策よりも、より多くの顧客情報がある状態です。大事なのは企業が「ユーザーのデータを持つこと」に対する責任をしっかり感じることです。データがあるから使うのではなく、どうデータを使えばそのユーザーに価値を提供できるかと意識することが重要です。
たとえば、毎朝同じ時間帯にメールがきて、昼休みにも同じようなメールがくる。そうすると「また自動メールか、うざったいな」と見ようともしなくなります。こうなるとMAは受注に貢献するどころか企業に対する信頼を毀損し、見込み客の側からコミュニケーションを遮断されるリスクが生まれます。
また、闇雲に「このページを見た人にこのメールを送る」というような行き過ぎたパーソナライズ(顧客一人一人の属性や興味、行動にあわせる)は、かえって“不快な体験”になる可能性もあります。パーソナライズした体験を提供するのは大事なことですが、やりすぎてはいけません。重要なのは、顧客目線に立った上で、こうした情報を活用し、適切なタイミングで適切なコンテンツを提供することで「価値」を感じてもらうことでしょう。根底にあるのは、相手の行動や心の動きに思いを馳せることだと思います。
老舗ホテルの敏腕コンシェルジュはお得意さまの状況を的確に把握し、それぞれのお客さまに合わせたサービスを提供することで、お客さまの満足度を高めます。コンシェルジュが顧客単価をあげようと、ホテル本位のコミュニケーションを始めたら、お客さまは興醒めし、離れてしまうでしょう。MAは、敏腕コンシェルジュが提供するような質の高い接客を、数万・数百万の方に対して提供できる可能性を秘めているのではないかと考えていますし、HubSpotが提供するインバウンドなMA施策も常に「人に寄り添い、想いを馳せる」ものでありたいと思っています。
明日から使える思考のヒント
「売る側のイネーブルメント」ではなく、「買う側のエンパワーメント」を意識したMA設計が、見込み客との信頼関係構築および将来の受注につながる。
インバウンドなマーケティングオートメーションでは「自社が売りたいとき」ではなく「相手が買いたいとき」を起点にアクションを設計する。