「インバウンドの思想」をマーケティングに~実践事例とその思考プロセス~
─ その施策は“顧客のため”になっているか?HubSpotマーケチームが語る、インバウンドの思想と実践法
─ 広告へのネガティブな印象を生まない。受け手に喜ばれる「インバウンドなオンライン広告」とは
─ 大切なのは、相手の行動に想いを馳せること。「インバウンドなMA設計」に欠かせない3つのポイント(本記事)
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顧客の情報を起点として、コミュニケーションを設計
マーケティングオートメーション(MA)とは、見込み客の集客から顧客の購買活動、購買後のアフターフォローまでのプロセスを自動化し、マーケティング活動における膨大な作業を効率化する仕組みです。HubSpotでは、MAにおいてもインバウンドなアプローチを大切にしており、適切なタイミングで適切な情報を、最適なチャネルで顧客に届けることでエンゲージメントを構築することを重要視しています。
第2回の「インバウンドなオンライン広告」では、HubSpotはビジネスの課題解決に役立つコンテンツを無料で提供し、広告で必要な方に届けていると紹介しました。私が担当しているMA施策は、広告やブログを介した顧客と企業の「初めての出会い」の次のステップである、「コミュニケーション施策」です。
「どんな広告をクリックしたのか」「どんなコンテンツをダウンロードしたのか」「ホームページ内のどのページを見たのか」という顧客の情報を起点として、その人にとって最適なタイミングで、次に必要なコミュニケーションができるようにMAを設計しています。ここから実際に、私がHubSpotでのMAを担当する中で得た「気づき」と具体施策についてお伝えします。
MAプランニングは「データ」と「人(ペルソナ)」で考える
現在、私はMAを活用した顧客とのコミュニケーション全般、たとえばメールの配信の自動化やチャットボットの企画運用や管理等を担当しています。
MAを設計するプロセスにもいくつかのケースがありますが、いずれのケースの設計にも、「データ」「人(ペルソナ)」の2つの要素が欠かせません。たとえば、特定のイベントに参加したリードのリストがあり、このリストに含まれるイベント参加者へのコミュニケーションをとっていく場合。この場合は、参加したイベントの特性や、参加者の業種データを鑑みて、イベント参加後のコミュニケーションとして適切なメッセージをプラニングします。たとえば業種や部署をもとにご案内する内容を分け、より親和性が高いと思われる情報をご紹介するようにしています。
他のパターンとして、一からMAを設計していく場合。この場合は、「データ」を起点に、「ペルソナ」の仮説を立て、プランニングすることが多いです。一例として、HubSpotの無料版を登録された方に向けたオートメーションを設計した例をご紹介します。
HubSpotで無料版を登録する際のフォーム内には「過去にCRMを使った経験はありますか?」という質問があります。この質問への回答として、日本は他国と比較して「利用経験がない」割合が多いというデータがありました。これをもとに、日本でCRMツールを利用したことのある方はアーリーアダプターが多いのではないかという仮説を立て、ITリテラシーが高く知見のあるアーリーアダプターには、簡潔な導入方法のご案内と、ご自身での活用を促せるよう、参照いただけるリソースをご紹介する内容をメールでお届けするコミュニケーションを設計しました。一方で利用経験がない方には、より丁寧なセットアップ方法のご案内と、すぐに効果を実感していただけるような機能をご紹介するメールを配信しています。
画一的な自動返信メールを送信するのではなく、受け手のニーズに応じた粒度の情報、受け手に心地よいと感じていただける情報をカスタマイズしています。リテラシーの高い方に、「懇切丁寧」なご案内はかえって不要な情報となります。ニーズにあった情報を元に、小さな成功体験を積んでいただくことで、HubSpotの使いやすさをより感じていただくことを重要視しています。このように「データから考える」「人ベース(ペルソナ)で考える」の2つは、MAのプランニングには欠かせない要素と考えます。