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オルビスのリブランディングはなぜ成功したか?改革の軌跡と次なる成長戦略

ブランドの思想を体現する商品を軸に

——以前からあった『オルビスユー』を、リブランディングの象徴的な商品として打ち出したのは、受け手としてはとてもわかりやすかったです。とはいえ、商品の計画が先にあると、難しいところもあったのでは?

 そうですね、そもそも『オルビスユー』は2014年にエイジングケア商品として発売しており、2018年10月にリニューアル予定でした。リブランディングの象徴として、ミッション、ビジョンから体現する商品のコンセプトを新しい『オルビスユー』に担わせることにしたのです。それまでは、春なら揺らぎ肌用、夏ならニキビ肌用など季節ごとに違う商品を推していたのですが、それをやめて1年を通じて徹底して『オルビスユー』を打ち出していきました。

 結果、『オルビスユー』はリニューアルから2ヵ月で販売累計67万個を突破し、過去のスキンケアシリーズの最高売上記録を更新しました。2018年は美容雑誌やWebメディアが表彰する様々な「ベストコスメ賞」を『オルビスユー』だけで36も受賞し、皆の自信になりました。

——既存顧客、あるいは新規顧客にリブランディングがどう受け止められるか、実行する際に留意したことをうかがえますか。

 絶対に気を付けなければと思ったのは、これまで愛用してくださっていた方々に「まったく別の商品になった」と捉えられないことです。そこには過去の反省があって、30代以上の方に向けて2014年に最初の『オルビスユー』を打ち出したときは、何か変えたいという想いが強く、従来とは違う雰囲気で提案したんですね。するとある程度はうまくいったものの、違和感を感じさせてしまったのも事実で、既存のお客様にいかに「本質的なところは変わらずに、最新の技術を使ってより良くなった、進化した」と思っていただけるかを、最も重視しました。

 ただ、新しい出会いも重要です。特に2018年当時は化粧品のD2Cブランドやオーガニックを謳う商品も多く登場しており、時代の“空気感”をまとわないと、化粧品選びの土俵にすら上がれません。なので、そうした見せ方をしながら、元々私たちが大事にしてきたものづくりの姿勢を伝えていきました。

創業時からの原点に立ち返りながら挑戦を

——直近では、2021年の春にパーソナライズスキンケアサービス『カクテルグラフィー』の提供を始められました。この狙いと、リリースの背景をうかがえますか。

 『カクテルグラフィー』は、IoTデバイス「スキンミラー」で毎日の肌の状態を測定していただきながら、その方の肌の状態に合わせて毎月変化する3本のパーソナライズスキンケア(美容液2本、保湿液1本)、自分の肌のためだけの情報が届く専用アプリから構成される定期販売モデルサービスです。最初は美容感度の高い方々を中心に話題になったのですが、本当にこのサービスを欲しているのは誰かを追求していった結果、スキンケアに対する正解がわからず迷子になっている方たちにも受け入れられ始めています。

 私たちは、それぞれのお客様にとって心地よい距離感で寄り添い、その人の可能性や選択肢を広げて、一緒に年齢を重ねて伴走するブランドになりたいと思っています。ただ、単に新しいことに何にでも着手していくとブランドが揺らいでしまうので、やはり「なぜオルビスがすべきなのか」、つまり原点に立ち返った上でミッションだったり「スマートエイジング」という提供価値は常に大事にしています。

 パーソナライズスキンケアの『カクテルグラフィー』は、その先に生み出した形です。自分の肌を自分で理解しながら、納得感を持って向き合っていただきたいという思いがあります。

——最後に、ブランドとして今後目指していく方向性についてお聞かせください。

 まず前提として、事業の中核はスキンケアを中心としたビューティーのブランドではありますが、化粧品に限らず、生活や人生という捉え方で私たちにできることはまだまだあると思っています。

 情報量の多さや価値観の多様化により、同じ肌質、同じ年齢でも美容の考え方が違ったり、美容の考え方は一緒でもライフスタイルは違ったりするので、従来のようなデモグラフィックのセグメントや購買行動ベースだけではお客様が成し遂げたいことを捉えることができません。アプリの記事コンテンツやAIを活用した解析サービスを提供していますが、そのお客様が「なぜその行動をしたのか」というデータからは見えない裏側を見ていくことが重要です。

 「きれいな肌でいたい」といったお客様の気持ちに応えることだけをゴールに据えるのではなく、その思いが叶った先にお客様が何を成し遂げたいのか。言葉を投げかけ、商品を手渡すだけでなく、常にお客様にとって心地よい距離感で手を差し伸べながら、一緒に「スマートエイジング」の階段を上がっていけたらいいなと考えています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/09/26 07:30 https://markezine.jp/article/detail/40035

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