2023年のモバイルアプリマーケティングを振り返る
MZ:2023年のモバイルアプリ広告はどのような傾向だったと考えますか。
峯:特に潮流として見られるのは2点あります。「無課金ユーザーの獲得戦略」と「グローバル展開前提のアプリ開発」です。
MZ:まず1点目の「無課金ユーザーの獲得戦略」から伺えますか。
峯:これは、収益モデルと連動した話です。課金収益のみのアプリは広告出稿の評価基準をROASとしていることが多いものの、昨今の課金額・課金率低下傾向の状況では、課金ユーザーのみを評価するのでは厳しい状況にあります。
一方で収益モデルがハイブリッド化しているアプリは、非課金ユーザーであっても長く遊んでくれるユーザーは広告を見ることで収益に貢献してくれます。IAP ROASターゲティングの出稿ではリーチできなかったユーザーも、Ad ROAS出稿で獲得することで、無課金ユーザーもうまく収益化につなげられるのです。
このことは、収益面だけの問題ではありません。課金しなくても長く遊んでくれるユーザーがいることは、場が盛り上がり、ゲーム運営において非常に大切です。広告出稿でも目先の収益の評価基準だけではなく、長く遊んでくれるユーザーをいかに評価するか、ユーザーベースの厚みをいかに作るかを考慮した獲得戦略の工夫が増えてきています。
また、アプリ内広告を入れることで継続率が上がるというデータもあります。広告視聴によってユーザーは課金した際と同じ体験をすることで、長くアプリを楽しみやすくなることがわかります。
ビジネスモデルを新たな環境へ適応させることが重要に
MZ:2つ目の「グローバル展開を前提としたアプリ開発」についても教えてください。
峯:これも日本の経済状況と課金収益のみのモデルには厳しめの現況からの潮流だと考えています。私たちがグローバルでのサービスであり、海外企業のアプリ運営と広告出稿についても目の当たりにしやすい環境にいて、ご相談を受けるケースが多いゆえの気づきです。
相談内容は、「日本のストアランキングでもなぜ海外企業のアプリが上位に多数入ってくるのか」「どういう収益モデルでどんな広告出稿をしているのか」「逆に自分たちが同様のグローバル展開のアプリ運営ができないか」などが増えてきています。
MZ:海外の収益モデルについて、もう少し伺えますか。
峯:一口に課金と言っても、抜きんでた課金額のユーザーが誕生しづらい中、どのように収益を上げるのかといった工夫が企画段階から考慮されます。広告収益も柱の1つとして、新規ユーザー比率が高ければ高いほど、広告収益のeCPM(effective Cost Per Mille)も高くなっていることを踏まえ、継続的な広告出稿でユーザー獲得をしている状況にあります。
個人的に思うのは、言語の問題もあるのか、日本は変化への対応が難しい印象があります。海外勢は変化ありきで、それを機会ととらえてチャレンジしていることが多いです。しかしゲームは、他のビジネスやコンテンツよりも国境を超えやすいものだと思っています。さらに海外に広がるゲームがアプリでも増えることに我々も貢献できればと思っています。