ダッシュボードで乗降×決済データの即時分析環境を構築
宮本(三井住友カード):もちろん観光客だけでなく、市電・市バスを日常的に利用している居住者を対象とした分析も可能です。今回は交通機関の利用動向を居住者の年代別に分析したところ、平日の出社時間や帰宅時間に世代間の差が見られました。このような属性別の利用実態を精緻に把握し、市電広告の適正化や世代別のニーズに応じた割引サービスの設計に活用することで、沿線の消費活性化が期待できます。
中木屋(鹿児島市交通局):利用者の国籍や居住地がわかるようになった点は非常にありがたいです。これまでは乗降人数しか把握できていませんでしたから。交通機関や駅の乗降者数に加え、乗降者の属性を広告代理店に提示することで、広告主のターゲットに近い媒体を提案できると考えています。
──今回三井住友カードは、分析結果をレポートとして提供するだけでなく、ダッシュボードを構築し、鹿児島市交通局が乗降データやキャッシュレスデータをリアルタイムに閲覧できるようにしたそうですね。ダッシュボードで閲覧可能なデータの詳細と、活用方法を教えてください。
登坂(三井住友カード):鹿児島市交通局様に相談した結果、ダッシュボードは大きく四つの画面で構成しています。一つ目は乗降データ、つまりstera transitを利用した人の量を駅別・時系列順に確認する画面です。
登坂(三井住友カード):二つ目は「乗降データ×日本人データ」の画面で、どのような年代・家族構成・年収の人が、いつ、どれくらい乗降しているかが確認できます。三つ目は「乗降データ×外国人データ」で、どの国で発行したカードを持っている人が、いつ、どれくらい乗降しているかがわかる画面です。
登坂(三井住友カード):四つ目の画面では、stera transitを利用して移動した人が、他にどのような業種でクレジットカードを利用したかがわかります。たとえばstera transitで天文館に移動した人が、近辺のショッピングセンターでいくら使ったかがわかるのです。
数万人規模のデータ処理業務を効率化
宮本(三井住友カード):乗降データとクレジットカードの属性情報や消費データを掛け合わせると、このように多くの分析軸が生まれます。これを実際にレポート化しようとすると、作業工数がどうしても膨らみますし、ミクロな動きも膨大な情報に紛れて見逃がしてしまう可能性があります。
しかし、このようにダッシュボード化されていると、多くの要素をクロスした状態のデータをワンクリックで見られるため、担当者自身が細かな部分を深掘りしていくことができます。
中木屋(鹿児島市交通局):見たいデータを一発で閲覧することができるため、非常に驚きました。鹿児島市の場合、1日あたりの乗降者数が市電で約3万人、市バスで約1万6,000人にも上ります。膨大なデータを抱えているため、これまでは担当者がデータの処理や加工に長い時間をかけていました。ダッシュボードは業務効率化にもつながっています。