3つの領域「広告支援/DX/事業開発」で新しい価値を創出
有園:デジタルホールディングスグループは2024年4月、連結子会社4社をオプトに統合しました。デジタルホールディングス(以下、デジタルHD)のCOOを務めていた金澤さんは、3年ぶりにオプトの代表に復帰しています。なぜこのタイミングで、グループの組織再編をしたのですか。
金澤:2020年7月の商号変更によって誕生したデジタルHDは、約3年間、グループとしてのケイパビリティを広げることに取り組んできました。DXが加速する社会変化に対応し、新たな課題、さらには産業変革を通じた社会課題の解決と向き合うためです。一方、もともと広告代理業を中心にサービスを提供してきたため、他の領域にサービスを広げても、「広告支援とあわせて提供してほしい」という要望が多くありました。
しかし、そのやり方だけでは今までにないような新しい価値を生み出すことは難しい。広告支援に加えて、DX、そして事業開発の3つの領域を独立させた形でサービスを提供し、対価をいただけるようにすることが必要です。そのため、3つの事業領域それぞれで新しい価値を創造することを掲げてきました。
それでわかったことは、DXや事業開発のビジネスの進め方が広告とは違うことです。広告支援は1を10、10を100にするような支援が多いですが、DXや事業開発は0から1を作る。「与えられた課題をどう解決するか」という広告のプロセスと比べて、DXと事業開発は「顕在化していない課題を見つけて定義すること」が求められます。今までとは異なるやり方なので難しかったですが、ノウハウを蓄積してきました。
そんな中、AIが台頭。クライアントでも、経営レベルでAI専任の部隊を組織する動きが出てきました。そのため、サービスごとに担当部署にアプローチするのではなく、クライアントの経営層と話した上で、AIを活用した広告支援・DX・事業開発の価値提供を進めるほうがクライアントの事業成長に貢献できると判断しました。そのために、中心的な機能をオプトに集約したのです。
組織再編にあたり、変えなかった3つのこと
有園:3つの事業をオプトが担っていくのですね。
金澤:事業開発領域は、起業経験者が集まり、新規事業開発を担ってきたグループ会社の社員が活躍しています。DX領域には、M&Aによってデジタルに強い2社に入ってもらっています。ただ、異なる事業、サービス、ビジネスプロセスの会社を一つにまとめるのは、胆力が必要でした。
有園:胆力は仕事をする上でとても大事ですよね。思うようにいかないことばかりですから。オプトの広告事業で作り上げてきた文化と、DXや事業開発の文化は全く違うので、大変だと思います。合併に関して、グループ内からさまざまな意見があったのではないですか。
金澤:まずはパーパス、バリュー、意思決定システムの3つは変えないことを社員に伝えました。グループ全体として目指す姿は変えずに、登り方を変える。そういった話をしました。
また、当社はどんなことでも社内に開示する社風があります。社員から経営に対して辛らつな意見が寄せられても、取捨選択せずに極力開示しています。会社に対して当事者意識を持ってもらうためです。今回も社員の意見とそれに対する見解を伝え、対話を重ねました。合併によって吸収された事業会社の社長たちが前向きなメッセージを出してくれたことも大きかったですね。
さらに統合前に1年間、ユニットベースで検証も行いました。広告で取り引きしているクライアントに対して、新ソリューションのアプローチをしたところ、引き合いが多く、実績も出ました。定量的にも定性的にも手応えがあり、統合した方がいいという結果でした。実績に基づいているため、社員の納得感も高まったと思います。