小売とメーカーがコラボを成功させるには?
ここで小林氏が「企業コラボの推進を成功させるポイント」として紹介したのが、次の五つだ。
- 日々の実商談をしている組織と別組織がPMOを行う。そしてこのPMOが社内も社外もつなぐ
- 両社間で事業を連携するにともなう長期的なビジョンを共有する
- 両社で顧客データを共有し、お互いに同じデータを見ながらコラボを推進する
- 双方がWin-Winとなる取り組みを目指す
- 他小売・他メーカーとの取り組みにも展開できる、双方にとって拡張性のあるものにする
一見すると、一つ目の「別組織をPMOとして設置すること」が最初のハードルになりそうだ。石田氏がなぜこのような体制を取るのか尋ねると、小林氏は次のように、その重要性の高さを説く。
「日常業務を行う組織と別の組織がPMOを務めることで、日常では仕入元・クライアントという関係性であるメーカー・小売りにおける“共創”が成り立ちます。つまり、同じ目線で同じターゲットである「消費者」をみて、同じ目的の実現にむけて方向性を合わせられるということです。そのため、コラボを推進する上でこの仕組みづくりは最重要だと考えています」(小林氏)
「ドつまみ総選挙」で実現したフルファネルでの訴求
セッションではここから、具体例を基にコラボ成功の秘訣に迫った。紹介されたのは、2024年11月にドン・キホーテとサントリーのコラボにより開始したキャンペーン「ドつまみ総選挙」。同キャンペーンは、ドン・キホーテ店内で展開するサントリーのお酒におつまみとして一番合うドン・キホーテのPB商品を、インターネットを通じた一般投票で決定するというコラボ企画だ。
同コラボ施策は、PPIHグループのリテールメディアや「majicaアプリ」などのデジタルでの展開に加えて、店頭陳列用の選挙ポスターボードの設置や全国約500店舗でお酒とおつまみのコーナーを隣り合わせに並べ替えるなど、リアルでの接点も創出。オン/オフを横断したフルファネルでの訴求を推進した事例となった。
同企画に対して小林氏は次のように述べる。
「『ドつまみ総選挙』は一見、ただの販促キャンペーンに見えるかもしれません。しかし実際は、ドン・キホーテのマーケティング部、MDチーム、PBチーム、営業チーム、店舗など、あらゆる部署を巻き込み、文字通り“全社総出”で取り組んだコラボキャンペーンでした。そこまで行うことで初めて、同キャンペーンをオンラインで知ったお客様の『認知』を、最終的な店舗での『購入』にまで促すルートの確立ができると考えています」(小林氏)
ただ、こうした全社を巻き込んだフルファネルでの訴求は、通常のキャンペーン施策や販促活動では中々実現が難しい。企業コラボだからこそ成し得たのだと小林氏は強調した。
石田氏も先述の成功のポイントに沿って企業コラボとしての成功要因を分析する。
「当社とカイバラボ様が中心になって推進した本施策では、若年層による飲酒文化の創造を大きなビジョンとして設定しました。これがコラボした両社にとってコラボの意義を共有できるものになり、結果的に連携を強められたと考えています。また、その実現のために、ドン・キホーテ様が持つ購買データをサントリー様と共有して確認しつつ、両社が持つ強みを活かしながら戦略・戦術を構築していったことも本施策の成功の要因ですね」(石田氏)
今回の結果を踏まえて、両社は今後、どのようにコラボの取り組みを推進していく予定なのだろうか。