ドン・キホーテが抱えていた「三つの課題」
近年では小売業界が持つ固有の課題を打破する試みとして、企業同士のコラボに注目が集まっている。MarkeZine Day Focus 2024には、NODEのマーケティング&セールス統括を務める石田直行氏と、カイバラボでデータコラボレーション部の部長 兼 データ事業推進部の部長を務める小林真美氏が登壇した。
NODEは、マーケティングおよびCX領域を支援するコンサルティングファンド。クリエイティビティとロジックをかけ合わせてクライアントの施策改善を支援している。一方カイバラボは、ドン・キホーテやユニーを擁するグループのデータ・デジタル領域の専門子会社。“小売の未来”をつくることをミッションに、実証実験の推進や外部とのコラボの推進、リテールメディア・データ事業の運営を行っている。今回のコラボにおいても、中立的なポジションでPMO(Project Management Office)の役割を担っているという。
セッション冒頭で小林氏は、ドン・キホーテがメーカー企業とのコラボを積極的に推進する理由を解説。まず、背景にあった三つの課題を挙げた。
一つ目が「購買体験の変化への対応」だ。近年、購買行動の多くがデジタルにシフトしたことで、これまで消費者が店内で行っていた商品の認知や比較などはネット上で済ませることが当たり前となった。しかし、同社では自社のECを保有していない。そのため、ユーザーが来店する前に「いかに商品と出会ってもらうか」を考える必要があったのだ。
二つ目が「消費者ニーズの多様化」だ。これまで同社では、「商品選定の目利き力」を活かしてアミューズメント性の高い商品を仕入れてきた。しかし近年では、多様化する消費者ニーズへの対応として、プライベートブランド(以下、PB)やOEM商品を取りそろえるように。そのため、仕入れだけではなく商品開発力強化の必要が生まれた。
そして三つ目が「競合優位性の担保」だ。PBの開発やリテールメディアなど新たな取り組みを積極的に進める同社だが、当然、競合他社も多様な事業に取り組んでいる。このような状況下で、従来のメーカーとの関係性のままで事業を進めているだけでは、競合優位性を保てないという危機感があった。
消費者理解に有効なパートナーシップの構築
ドン・キホーテは「顧客にとって最も都合の良いお店であり続ける」をスローガンに掲げている。先述の三つの課題の解決策になり、このスローガンの実現にも近づく方法こそが、メーカーとのパートナーシップの構築だと小林氏は語る。
「消費者のニーズに応え続けるためには、消費者理解が必須です。それはメーカー様にとっても同様でしょう。そのため、当社が有するデジタルとリアル店舗両方での消費者との直接接点、そしてそこから得られる購買履歴などの消費者データをメーカー様とともに活用しながら、商品開発や買い場づくり、広告販促活動を実現していく必要があると考えています」(小林氏)
だが、各事業者としてはコラボを通じたより深いパートナーシップに際して懸念もあるだろう。石田氏が小売とメーカーがコラボを進めていく上での難易度の高さを指摘すると、ドン・キホーテでもコラボを推進していく上で次の三つの障壁に直面したと小林氏は語った。
- 「仕入れと販売」という従来の関係性から脱却できない
- 小売側・メーカー側ともに、組織横断でのプロジェクト推進が必要になる
- 新たな取り組みに向けた十分な稼働工数やコストを有していない
では、これらの障壁に対して、同社ではどのように対処したのだろうか。