リバイバルが見込めそうな旧譜を人力で探す!?
──デジタル化が進んだ影響により、御社で集められるデータの種類や分析の手法も高度化されていますか?
主要なストリーミングサービスの場合、アナリティクスのデータを閲覧することができます。ユーザーがプレイリスト経由でその楽曲を聴いたのか、検索して楽曲にたどり着いたのかがわかりますし、国や年代などのデータも取得可能です。それらのデータを細かく見て戦略を考える動きも出てきています。ただ、全てのチームでできているわけではありません。チームによってはそこまで手を回す余裕がなかったり、分析のノウハウが不足していたりするためです。

──聴取スタイルの変化を受け、御社では2023年より旧譜のリバイバルを狙ったプロモーション施策に注力しているそうですね。
SNSを中心に注目され始めた旧譜を、できるだけ多くの方に届ける目的でプロジェクトがスタートしました。元々、世間で話題になった旧譜をプレイリストに含めて展開する取り組みはあったんです。担当者がSNSなどをウォッチしながら「この旧譜が話題になっていそうだ」「この旧譜にニーズがありそうだ」と感じた曲でプレイリストを編成していました。
ただ、話題の旧譜を人力でピックアップする作業には限界がありました。当社が保有する旧譜のカタログだけで10万曲を超えます。ある旧譜が話題になった1ヵ月後に、担当者がその盛り上がりを知るケースも少なくありませんでした。気付いた頃には盛り上がりが収束していることもしばしばあるため、話題化の初期段階で兆しを拾う必要があったのです。
毎月平均200曲の“兆し”を検知
旧譜リバイバルチームが抱える課題をヒアリングした結果「機械学習で兆しを拾えるのではないか」という仮説を立てました。元々SNSの投稿や音楽の再生数はDomoのダッシュボードでモニタリングしていたため、ツールにデータが入っている状態でした。Domoに最近増えつつあるAI関連機能の中に、Pythonのノートブックを実行できる環境があります。我々のチームで予測モデルを作り、過去の配信実績を学習させて旧譜の再生数を予測できるようにしました。
予測モデルが出す数値と、実際の再生数との間に大きな乖離が生じたら、それが話題の“兆し”です。その兆しを旧譜リバイバルチームの担当者に報せます。Domoのダッシュボードを見せるケースもありますし、最近はDomoからSlackに通知が届くよう設定したため、担当者がSlack上でアラートを受け取れるようになりました。

毎月平均200曲の兆しがアラートとして上がってきます。兆しが見られたからといって、必ずしもプレイリストに含めるわけではありません。200曲中半数以上は、担当者も話題化を把握済みの曲です。アラートをきっかけに調査を進め、勝機が見込めそうな場合はプレイリストを作成します。