新時代のジャーニーと「ショート動画」という戦場
タッチポイントで今注力しているのは、ショート動画です。ショート動画も複数の切り口(約20パターン)で、多様な形態(自社メディアやUGC風動画)で投稿することで、消費者との接点を最大化しています。 また、UGCの起点となるような体験価値提供型のポップアップなども手掛けることがかなり多くなりました。これらすべてをPR発想で統合的に実践していくことが求められています。TikTok Shop、TikTok LIVEといった場を通じ、コマースにも直接つなげることまで領域を拡大して対応中です。
ただ、直近感じていることは、いわゆる「万バズ」が単一のチャネルやコンテキストで起きたとしても、大きくは売れない時代へと変化しています。リーチはしているけれど、それだけでは選ばれていないということです。
──では、「選ばれる状態」を作るためにはどうすればよいのでしょうか。
現在のモノが売れるトリガーを、私はよく「花粉症と同じ」とお伝えしています。花粉を積み重ねていくと、閾値を超えて花粉症になるように、複数の文脈から「納得の蓄積」が閾値に達した瞬間に購買が起きます。
そこで重要になるのが、我々の考えるブランディングPRです。
単発的な話題化ではなく、中長期的な視点で、複数の接点から継続的に情報を届けていく。そして、マンスリーでPDCAを回しながら、社会や生活者との接点を更新し続けることが重要だと考えています。
また、先ほどお話ししたように、AIに「このブランドが優位だ」と認識される状態も、短期的には作れません。継続的な情報発信と信頼の蓄積によって、はじめて形成されていくものです。
こうしたブランディングPRとマーケティングPRの掛け合わせこそが、現在の私たちのPRの根幹になっています。
AIが見つけられない「本当のインサイト」。PR思考マーケターが担う未来の価値
──最後に、次世代のマーケターやPRパーソンへのメッセージをお聞かせください。
文脈の整理や生産性向上にはAIを活用していますし、リサーチ効率化もAIに任せる部分が増えました。ただ、生活者とブランドのつながりの中に隠れている「驚き」や「喜び」といった本当のブランドニーズの発見や、ブランドとしてカルチャーを創ることは、まだAIにはできないと思っています。
たとえば、SNSで最も再生が回っている動画のサムネやハッシュタグを、AIでトレースして類似商品に当てはめても、万バズは生まれないし売れません。AIは、改善したネット上の情報は探せますが、ブランドの本質は見えていないからです。グループインタビューやデプスインタビューで言語化されていないインサイトの中にこそ、本当のチャンスが隠れていて、そこはまだ人間が気づけるところにあると考えています。
これまでPRパーソンが行ってきたのは、「兆し」のある未来トレンドを見つけ、まだ言語化されていないインサイトを掘り起こして、ブランドと生活者をつなぐ価値を作ることです。マルチコンテキストで複数の切り口を当てていく中で、初めて本当のインサイトが見えてくることもあります。差別化が難しい時代だからこそ、AIをグロースパートナーとして育てながら、量のリーチではなく「質のある認知」を作っていく。そこにPR思考マーケターの役割があると思っています。
