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MarkeZine Day 2026 Online

脱・経験則!廃棄38%減を実現した花王の「AI需要予測」とマーケティング共創プロセス

 消費者ニーズが細分化し、トレンドが目まぐるしく変化する現代において、新製品の需要を正確に予測することはマーケターにとって極めて難易度の高いミッションだ。長年、ベテラン担当者の「経験」に頼らざるを得なかったこの領域にAIを本格導入し、化粧品事業における棚卸資産の38%削減という驚異的な成果を上げたのが花王である。2026年5月に開催したMarkeZine Day 2026 Onlineには同社のデータサイエンティスト石渡健祐氏と箕輪映友子氏が登壇。EVERRISE 執行役員 CMOの松本健太郎氏を聞き手に取り組みを語った。本稿ではその様子をレポートする。消費者の視覚的な「感覚」をいかにしてデータへ転換し、算出された数値を部門間の合意形成やマーケティング施策にどう組み込んでいるのか。最前線の対話から、真のデータ駆動型経営を実現するための実践的なヒントを紐解く。

経験則からの卒業。花王が挑むAI需要予測

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(写真左)株式会社EVERRISE 執行役員CMO 松本 健太郎氏
(写真中央)花王株式会社 デジタル戦略部門 DXソリューションズセンター チーフデータサイエンティスト 石渡 健祐氏(※講演当時の役職、記事掲載時点ではデジタル戦略部門 DXソリューションズセンター 担当部長)
(写真右)同センター データサイエンティスト 箕輪 映友子氏

 マーケティング領域において、消費者ニーズや嗜好の移り変わりを正確に捉え、新製品が市場でどの程度受け入れられるかを事前に見極めることは、担当者にとって常に頭を悩ませる困難な命題だ。特に現代のようにデジタルトレンドが目まぐるしく変化し、消費者の好みが細分化・多様化する環境下において、的確な予測を行うハードルは高まり続けている。過去の成功体験や主観的な判断のみに依存した属人的な需要予測は、過剰在庫や欠品といった大きな経営リスクを伴いかねない。

 こうした多くの企業が直面する課題に対し、AI活用アプローチで確かな成果を上げているのが、日用品から化粧品まで幅広く事業を展開する花王だ。同社は需要予測システムにAIを本格導入し、生活者の反応や商品の特性を客観的なデータとして捉えながら、マーケティング施策とサプライチェーンの供給判断を連動させる強固な仕組みを構築。データを意思決定の基盤に据えるこの取り組みは外部からも高く評価されており、2026年度の経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2026」にも選ばれた。

 本稿では、同社デジタル戦略部門DXソリューションズセンターでチーフデータサイエンティストを務める石渡健祐氏と、ブランド現場に常駐して業務支援を行うデータサイエンティストの箕輪映友子氏が登壇したセッションの模様をレポートする。進行を務めたのは、EVERRISEで執行役員CMOの松本健太郎氏。マーケターでありながらデータサイエンティストとしての顔も持つ松本氏の視点に基づく進行のもと、セッションは展開した。

 花王の取り組みが単なる先端技術の導入事例にとどまらず、組織横断的な意思決定へとどのように発展していったのか、両社の対話を通じて明らかになったプロセスを紐解きたい。

新製品の壁を越える「経験則」のデータ化

 花王がAIによる需要予測の仕組みを本格的に推進するに至った背景には、同社の注力領域を担う化粧品事業が抱える特有の難しさが存在していた。化粧品市場はSNSなどの話題や季節ごとのトレンドに極めて敏感であり、需要の変動が激しい。加えて、商品を展開する際の色展開やサイズ違いを示すSKUの数が膨大となるため、それぞれのアイテムに対して精緻な供給計画を立案することは非常に困難なミッションといえる。

 セッション内において松本氏は、提示された資料から花王の需要計画が最大18ヵ月先まで立案される点を確認し、「これほど長期間の計画を立てるにあたり、具体的にどのあたりが属人的な作業になっているのか」と問いを投げかけた。実務の核心を突く問いに対し石渡氏は、「過去の販売実績データが存在しない新製品の予測において、長年の経験を持つベテラン担当者の知見に強く依存していた実態があった」と回答。過去に発売された多数の製品の中から類似品を探し出し、ある色は「売れ筋になるだろう」、別の色は「あまり動かないだろう」という感覚的な推測に基づいて計画が立てられていたという。

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 セッション内でも松本氏が端的に整理したように、属人的な経験や暗黙知に基づく判断をAIの予測モデルへ置き換える今回のアプローチには、「個人の知見を客観的なデータへ転換する」という狙いが明確に込められている。

 担当者の異動や退職による予測精度の急激な悪化を防ぎ、業務の継続性を担保することへの期待が、今回のプロジェクトを力強く牽引していったのは間違いない。これにとどまらず、予測業務にかかる多大な負荷も無視できない課題だ。何千というSKUに対して手作業で数値を調整し、各部署の合意を取り付けるプロセスは、担当者の疲弊を招きやすい。人間が行うべき高度な意思決定と、機械が得意とする膨大なデータ処理の役割分担を明確にすることは、AI導入において改めて重要な前提条件だとわかる。

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感覚を数値化。「売れる色」を導くAI術

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/06/30 07:30 https://markezine.jp/article/detail/50878

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