電通は2026年8月24日、人工衛星データを活用してキャベツの需給を予測し、広告と店頭販促を連動させる「需給連動型広告モデル」の実証実験に関する記者説明会を開催した。
宇宙データで挑む、需給ギャップと次世代農業
同取り組みは、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の事業共同実証プログラム「J-SPARC」の枠組みにおいて、JAXAおよび嬬恋村農業協同組合(以下、JA嬬恋村)と共同で行っているもの。2022年のコンセプト始動から段階的に推進しており、2026年8月24日から実験的市場投入として首都圏および関西の量販店で順次展開する。
取り組みの背景として、供給過多による価格暴落やフードロス、供給不足による需要不一致といった、天候や市場環境に左右されやすい農業の需給ギャップの問題があった。
日本一のキャベツ生産地であるJA嬬恋村では、国指定の産地として安定供給の義務を負うがゆえに生じる過剰生産気味の構造や、気象変動による値崩れリスクを抱えていた。そこで、人工衛星データおよびレーダ衛星「だいち4号」の活用により「広域かつ継続的な育成状況の一括把握」「出荷と販売判断の高度化」「フードロス削減を通じた持続可能な農業」の3点を実現。農家の経営不安軽減や、受動的だった販売戦略から「攻めの農業」への転換により、生産者と消費者の双方にメリットをもたらす次世代農業モデルを目指すと、JA嬬恋村の組合長を務める黒岩 宗久氏は語った。
同取り組みにおいて、JAXAは人工衛星データの技術的活用支援や関係組織の連携調整などを担当。理事の奥野 真氏によれば、従来の光学衛星に加え、天候や昼夜の影響を受けにくい先進レーダ衛星を用いることで、よりきめ細やかに畑の状況の把握が可能となる。1回の撮像で広域のデータを取得できる衛星は、コストの面でも優れている。
「供給」を起点に需要を動かすアプローチ
電通の統括執行役員である深田 欧介氏は、従来の広告・販促施策が生活者の需要のみに基づいて計画され、農産物の生産・供給状況と連動していなかったと説明。供給が多い時に需要が盛り上がらず、供給が少ない時に需要が喚起されるといったギャップが、販売機会の損失やフードロスの発生につながっていた。
今回の試みでは、広告を単なる「需要喚起の手段」から「供給と需要をつなぐ仕組み」として再定義する。予測データを基に、供給増加が見込まれる時期には広告・販促を強化し、供給不足が見込まれる時期には出稿を抑制する。これにより、需要側ではなく供給量を起点として、施策をコントロールしていく狙いだ。
衛星データを活用した広告で、店頭の販売と家庭の消費を促進
具体的な実証実験としては、広告設計を担う電通をはじめ、JAXA、JA嬬恋村の他、関連製品の広告出稿・店頭販促実施において味の素、流通支援としてJA全農ぐんま、データ解析・予測モデル構築で電通デジタル、人工衛星データの解析や調査でリモート・センシング技術センター、ダッシュボード開発には両毛システムズが参画している。
人工衛星データや現地調査データ、市場データなどを組み合わせた機械学習モデルにより、8週間前の段階で出荷量や卸売価格を予測。売り場作りや広告出稿の事前の準備・調整の基盤として活用する。
味の素の執行役常務(食品事業本部副事業本部長、コンシューマーフーズ事業部長)神谷 歩氏は、食品ロスが食品小売業全体で年間48万トン発生している背景に需要と発注のミスマッチがある点、さらに家庭でも使い切れずに廃棄される野菜の代表格がキャベツである点を提示。この二重の廃棄課題に対し、量販店での「おいしい買いどき」の需要創出と、家庭での「おいしい食べ方」の提案を同時に行っていくとした。
具体的な実証内容としては、首都圏・関西の量販店約50店舗にて、キャベツ売り場で同社の主力商品「Cook Do」<回鍋肉用>を併売するクロスマーチャンダイジングを展開。メニュー提案を行うことで、キャベツの購入と消費を促進する。
運用面では電通と連携して、年度計画であらかじめ設定した広告枠に対し、予測と連動させて広告出稿量をダイナミックに増減・差し替える運用を実施。量販店での売り上げ拡大と家庭での消費促進を両立させながら、店頭と家庭の双方でフードロス削減を目指す。
さらに、中長期的には全国への拡大やキャベツ以外の野菜品種への水平展開も視野に、検証を進めていく。
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