近年、アジアにおける中間所得者層の増加や円安といった背景を受け、訪日外国人旅行者が増加している。特に現在、2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、訪日プロモーションの展開や訪日客向けサービスの拡充が推進されており、さらなるインバウンド需要拡大が見込まれている。中でも、中国からの旅行者は年々増加傾向にあるだけでなく、「爆買い」というキーワードに象徴されるように、2014年の旅行消費額は前年の2倍を超える5,583億円(国土交通省観光庁「2014年訪日外国人消費動向調査」)となっており、その消費額の高さに注目が集まっている。このような背景を受け、GMOリサーチは、同社が保有する中国の提携モニターを対象に「訪日中国人の消費行動調査」を実施した。
訪日前に期待したこと、訪日中に実際にしたこと
日本でどのような消費行動が行われているかを把握するべく、訪日旅行経験者を対象に、訪日前に期待したこと/実際にしたことを尋ねた。訪日前に日本に期待したことについては、「自然・景勝観光」(67.8%)、「日本食を食べる」(66.7%)、「ショッピング」(66.7%)がそれぞれ60%を超える結果となった。
実際にしたことは「日本食を食べる」(68.7%)、「ショッピング」(67.4%)、「自然・景勝観光」(59.4%)と続き、上位の「日本食を食べる」「ショッピング」については、事前に期待はしていなかったものの、実際に日本に訪れることで行動を後押しされた人が少なからずいることがわかった。
一方で、「日本の歴史・伝統文化体験」については、期待した人が58.2%と多かったのに対し、実際に行ったのは42.6%と15ポイント以上の差があり、日本の歴史や伝統文化との接触機会が持てていない結果となった。
訪日旅行経験者の約95%が、「もう一度日本に行きたい」と感じている
訪日旅行経験者を対象に日本への再来の意思について尋ねたところ、「大変そう思う」(53.8%)、「ややそう思う」(41.1%)を合わせて約95%となり、ほとんどの人が日本にもう一度行きたいと感じていることがわかった。
続いて、今後の日本のインバウンド需要を把握するべく、次回訪日の際にしたいことを調べた。訪日経験の有無で数値を比較したところ、訪日経験がある人はない人に比べて、項目全体で行動意欲が高いことがわかった。中でも「ショッピング」(訪日経験有り:66.7%、訪日経験無し:51.5%)についての割合は約15ポイント以上の開きとなり、全項目内で最も差があることから、日本での「ショッピング」に満足し、再来時にも「ショッピング」を希望していることがうかがえる。
日本で購入したもの、「化粧品・香水」がトップに
「ショッピング」に関心が高い人が多いことから、実際に日本で購入したものについて調査したところ、日本で購入したものは「化粧品・香水」(66.7%)、「カメラ・ビデオカメラ」(52.2%)、「電気製品」(51.9%)、「服・かばん・靴」(50.0%)のカテゴリで50%を超える結果となっており、日用品よりも嗜好品、ぜいたく品にカテゴライズされる商品が上位3位を占めた。
情報収集経路と購入決定理由
情報収集経路
日本での購入品上位3位「化粧品・香水」「カメラ・ビデオカメラ」「電気製品」において、どのように販売店舗の情報を収集したかを調べた。
化粧品・香水は「知人が教えてくれた」(35.1%)、「検索エンジンで調べた」(28.2%)、「旅行情報サイトで見た」(25.8%)と続いた。カメラ・ビデオカメラは「検索エンジンで調べた」(33.5%)、「知人が教えてくれた」(29.9%)、「ツアーコンダクターからの紹介」(24.7%)と続いた。電気製品は「知人が教えてくれた」(38.0%)、「旅行情報サイトで見た」(28.6%)、「検索エンジンで調べた」(28.1%)と続いた。そのほかにも「ガイドブックで見た」(25.5%)、「観光案内所からの紹介」(22.4%)などの割合が他2カテゴリより高く、「電気製品」については人から直接得た情報による影響が大きいことがうかがえる。
3カテゴリに共通して、「知人が教えてくれた」と「検索エンジンで調べた」という回答が多いことから、知人や現地の人からの受動的な情報と、検索により自主的に収集した情報の双方が販売店舗の選定に影響していると考えられる。
購入決定理由
化粧品は「品質がいいから」(51.2%)、「価格が手頃・自国より安いから」(41.9%)、「お土産にいいから・頼まれたから」(39.5%)と続いた。カメラ・ビデオカメラは「品質がいいから」(56.7%)、「価格が手頃・自国より安いから」(47.4%)、「好きなブランド・商品だから」・「日本製であるから」(42.3%)と続いた。電気製品は「品質がいいから」(50.8%)、「日本製であるから」(49.2%)、「価格が手頃・自国より安いから」(42.5%)の順となった。いずれのカテゴリも、品質の高さと手頃な価格が購入に大きく影響しており、日本の製品へ高い信頼をおいていることがうかがえる。
総論
この度の調査で、中国人旅行者のインバウンド需要の高さと、今後のさらなる高まりが期待できる結果となった。訪日経験のある中国人旅行者においては、ほとんどの人が日本に再来したいと考えており、訪日経験のない人と比較してもさまざまな項目で行動意欲が高いことから、今後リピーターとなる人も多いと考えられる。
また、特に関心の高い「ショッピング」においては、日本製品の品質に信頼が寄せられており、また販売店舗の情報は知人の口コミや自主的なインターネット検索など、複数の情報源から収集していることがわかった。今後、中国人旅行者の訪日およびインバウンド消費をさらに後押しするためには、旅行前の情報収集に活用できる中国人向けWebコンテンツの充実をはかるとともに、訪日時に日本製品のコストパフォーマンスの高さをアピールし、質の高い製品・サービスを提供することで、旅行後の口コミにつなげていくことが重要だろう。
【調査概要】
調査地域:中国
調査方法:インターネット調査(クローズド調査)
調査期間:2015年3月27~31日
調査対象:
過去3年以内に訪日旅行経験のある男女552名
過去に訪日経験はないものの、今後3年以内に訪日旅行予定のある男女540名
合計1,092名
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