事業拡大にともない「内製文化」では追いつかないように
押久保:今回は、部署を横断して「KARTE」を活用しているというビズリーチさんを突撃します! 渋谷から徒歩5分ほどのビルの中に、こんな公園のような空間があるとは……。
押久保:私も面識がある冨里さんがKARTEの“社内エヴァンジェリスト”らしいということで、冨里さんにまずお話をうかがいたいと思います。現在、どのくらいの事業でKARTEを使っているんですか?
冨里:約2年の間に次々と増えて、今は全部で十数事業のうち8事業で活用しています。「ビズリーチ」や「キャリトレ」のような転職支援サービスだけでなく、「BizHint」などのメディア事業でも使っていますね。1,300人ほどの当社社員のうち、200人を超えるメンバーがユーザーアカウントをもっていると思います。
押久保:それは多い! 導入のきっかけはなんだったのですか?
冨里:KARTEは、まず「ビズリーチ」の事業で2016年7月ごろに導入しました。背景のひとつには、当社の元々の“内製体制”では、事業成長スピードに対応できなくなってきたことがあります。外部のサービスも効果的に使っていく必要性が出てきたころ、かなり初期にトライアルしたのがKARTEでした。
押久保:確かに、御社はテクノロジーに強い印象があります。
冨里:各種システムも基本的にスクラッチで開発することが多かったので、それこそKARTEの代表的な機能であるポップアップも社内で実装はしていました。ですが、工数がかかりますし、マーケティングのほうでイメージを少し変えたいと思っても、都度エンジニアに依頼しないといけないので、時間もかかります。事業が増える中で、エンジニアには本業に集中してほしいという考えもあり、KARTEを試してみました。
エンジニアの手を煩わせず柔軟に対応できる
押久保:最初はどのような施策を行ったんですか?
冨里:まずtoCである求職者に対して、職務経歴書の登録代行サービスの告知と利用促進のポップアップを掲出してみました。こちらのサービスは以前からあったのですが、内部の人的リソースの兼ね合いもあり、大々的に打ち出せておらず、利用率が低かったんです。そこでKARTEを通して転職意欲の高いセグメントに絞ってポップアップを掲出したところ、1週間くらいですぐに流入が増えました。
押久保:狙い通りだったんですね。
冨里:そうですね。しかも「今週はスタッフが足りないから取り下げよう」といった細かい対応を、エンジニアの手を煩わせずにマーケティング側ですぐに行えるので、そのスピードと柔軟性が大きなメリットだと思いました。これを皮切りにいろいろな施策を試していたら、KARTEの効果や使い勝手の良さが社内に自然と広まっていったんです。
押久保:なるほど。自然と広まっていったというのは、社内で“口コミ”が起きたような?
冨里:まさにそんな感じでした! 次々と他部署から問い合わせがきて。私自身も、せっかく同じ会社なんだから異なるツールではなく同一のツールを使って施策の相談や知見の共有ができたらいいと思っていたので、SlackでKARTEのユーザーグループを作り、ユーザー会の資料などを共有し始めました。そんなこともあり、しばらく試して使わなくなるサービスも多い中で、KARTEはすっかり定着しました。
同時に、先ほどお話した通り当社には内製の文化があったのですが、「外のサービスもちゃんと活用できるんだね」という風潮も出てきたので、タイミング的にも当社の成長に合致していましたね。
一連のプロセスの成果が可視化されるのが素敵
押久保:では次に、現在「ビズリーチ」の法人向けのマーケティングを担当されている芦澤さんにうかがいます。toBでのKARTEの活用状況はいかがですか?
芦澤:私は今年5月に当社に中途入社したときに“KARTE担当”を拝命しまして。
押久保:拝命! 専任というか、がっつり使ってくれ、と?
芦澤:そうですね(笑)。toBでもサイト来訪者のCVR向上を目的に、toCに続いてKARTEを導入はしていたのですが、活用しきれておらず、私が担当してからtoBでの活用を推進しました。たとえば、KARTEを通して細かく利用者のサイト内行動やその時間帯を把握していったところ、我々の想定以上に平日の夜や土日にも情報収集されていることがわかりました。そこから平日夜間や土日の来訪者向けの施策を強化したり、営業時間内に活用しているチャットウィンドウの見せ方をニーズから逆引きした訴求に変更したり、といった改善をしていきました。
押久保:業務時間以外にも情報収集は行っているということですね。効果はありましたか?
芦澤:はい、一定量の流入がありますね。また、ユーザー行動を追うことで、必要な情報にたどり着くまでに時間がかかるという「体験不和」が起きていることもわかりました。そこで、価格や資料請求など流入が多いコンテンツにはすぐに飛べるよう、それらをサイトトップのポップアップで出したんです。そこからのリードは、改善前の数倍に上り、手応えがありましたね。
押久保:なるほど。その数値の可視化も重要ですね。
芦澤:そうなんです。CXを改善した結果、実際にどれだけ受注につながったかという一連のプロセスの数値が全部見られるのは、素敵です……! 自部署のチームメンバーに日次の仮説検証結果を報告したり、全社のマーケティング担当向けに成果を共有していますが、皆が興味をもってくれて、連帯感も生まれています。今後は、セグメントの最適化を掘り下げたいですね。
顧客の姿が鮮明になっていくのが嬉しい
押久保:さらに別部門での活用として、HRテック(HR × Technology)で採用を強くする「HRMOS(ハーモス)採用管理」事業の折元さんにお話をうかがいます。こちらは完全にtoBのビジネスモデルになりますか?
折元:そうですね、戦略的な採用管理のためのソリューションで、SaaSのサブスクリプションモデルになります。私たちの視点としてはリード獲得も大事ですが、それ以上にカスタマーサクセスが重要だと考えています。
押久保:いつごろ導入して、今どのように使っているのでしょうか?
折元:導入したのは1年ほど前なのですが、社内の皆がKARTEの知見を貯めてくれていたので、HRMOS採用管理のエンジニアがわからないところは他部署のエンジニアに聞いて解決してくれたりして助かっています。現状では初期のクライアント企業へのチュートリアルをKARTEで作成したり、利用を促進したい機能をポップアップでお知らせしたりしています。よりプロアクティブな支援をしていこうと模索中です。
押久保:社内の蓄積があると進展が速いですね。KARTEを使い始めてからの印象や手応えは?
折元:今までも顧客のことを見ているつもりでしたが、意外とわかっていなかったのだな……と思わされましたね。採用担当の方がどんなクリエイティブが好きで、ポップアップに何曜日に反応しやすくて、といったことがKARTEを使い始めて見えてきました。エンジニアの力を借りないでも施策を実施することができるので、色々とA/Bテストを行い試しているところです。日々顧客の姿がつかめてくるのは、とても嬉しいですね。
トライアル&実装の決断をしやすいのが利点
押久保:では場所を変えて、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」の事業部がある別のビルへ……。
押久保:続いて、キャリトレでtoCのマーケティングを担当している野村さん、toBご担当の佐藤さんを直撃します! 前半の取材で、自然発生的にKARTEが広まっていったとうかがいましたが、キャリトレではいつ導入したんですか?
野村:キャリトレはまずtoCで、最初の導入部門となった「ビズリーチ」とほぼ同じタイミングで導入しました。当時から、Web接客をもっと強化していこうという考えがあったので。直近の活用で大きかったのは、それまで実施していた接客を一度全部やめて改めて構築し直したことですね。
押久保:全部やめる、とは思い切った決断ですね。なぜ?
野村:それまで、広告キャンペーンごとに少しずつ異なるユーザーが流入していたこともあって、都度こちらが“したい接客”を追加してしまっていました。ふと顧客目線に立ち返ると、「あれ、これこの人にも必要なのかな?」と思うことが重なって。思い切ってすべてやめてみたところ、数値がまったく変わらなかったんです。「過度な接客をしていたんだ」と実感させられました。
そこでKARTEで可視化したユーザー動向を元に改めて接客を構築したところ、成果が現れるようになりました。KARTEは「やってみてダメなら戻す」ということが簡単にできるので、こういった思い切った挑戦もしやすいですね。
押久保:では、toB部門への導入の経緯は?
佐藤:toCのチームから評判も聞いていましたが、ちょうど去年の今ごろ、事業の成長にともなって、私たちの体制をクライアントごとの「専任コンサルタント制」から、全クライアントを皆で担当する「チーム制」へと大きく変えるタイミングがありました。これまでの属人的な対応を、ある程度システムの力でフォローしていかないとスケールしないので、その一環で導入しました。
FAQの導入でクライアント企業の利便性向上
押久保:toBではKARTEをどのように使っているんでしょうか?
佐藤:当初はチャットをメインに使っていましたが、クライアント数の増加と比例して増えていた問い合わせに対応しきれなくなっていたので、FAQも追加しました。チャットの問い合わせ内容を精査したところ、9割が定型で返せるものだったんです。FAQを入れたら、右肩上がりのクライアント数に対して問い合わせ数はきれいに横ばいになり、驚きました!
押久保:それは、明確な効果ですね。
佐藤:FAQの利用頻度が上がったので、こちらの工数削減だけでなくクライアントにもメリットになっていると実感しました。FAQのメンテナンスもエンジニアに頼まずにできるので、とても使いやすいです。
押久保:やはり、スピード感が違うんですね。最後に、これから着手したいKARTE活用について一言!
佐藤:今後は、ポップアップなど積極的な接客の機能をtoBでも使おうと考えています。
野村:toCでは逆に、求職者向けでもチャットは有効だろうと思っています。今後はtoBとtoCの間でナレッジを共有し合って、活用をより深めていきたいですね。