訴求力、中間指標の取得に優れたタクシー広告
――地方のテレビCMと都内のタクシー広告で比較検証したところ、タクシー広告のほうが評価は高かったというお話ですが、タクシー広告の良さはどのような点にありますか。
顧客数で言えば、都内がやはり最も多いですし、そこでタクシー広告を展開することで、全体のコンバージョンや自然検索のコンバージョンが一気に増えました。先ほどお話ししたように、当社を知ったきっかけとなる認知チャネルは必ずヒアリングしているのですが、テレビCMよりもタクシー広告のほうがCPA的に良いという結果が出ました。
そしてタクシー広告とテレビCMを比較したとき、何が一番違ったかと言えば、タクシー広告のほうは間接効果が非常に高かったのです。タクシー広告では、「詳しくはこちら」という案内文とともにQRコードを表示し、当社のWebサイトへ誘導をかけていたのですが、「詳しくはこちら」がタップされる割合と広告効果が関係していることが判明しました。こういう中間指標を取ることができたことが、タクシー広告の良かった点です。
――インパクト、影響力という点ではいかがですか。
それはテレビCMもタクシー広告も、それぞれにありますね。タクシー広告は残存効果が高く、2018年11月に1ヵ月間展開したのですが、12月に入ってからも数週間は「タクシー広告で見ました」という問い合わせが続きました。オンライン広告では、そこまでの残存効果はなかなか得られなかったので、この反応に驚きました。
――テレビCMでA/Bテストを行ったことも、タクシー広告の成果につながったのかもしれませんね。
それはあると思います。
実施してわかったテレビCMのPDCAの回し方
――そこでおうかがいしたいのですが、マーケターの中には「テレビCMはPDCAが回せるのか?」という根強い疑問があります。テレビCMに限らず、そもそもオフライン広告はデジタルに比べるとデータが圧倒的に少ないので、ブラックボックス的な印象がありますよね。そのためデジタルマーケティングに熱心に取り組んできた企業のマーケターは、テレビCMへの投資判断がなかなかできない状況にありますが、これについてはどのような見解をお持ちですか。
まずPDCAを回すのであれば、データを確実に取れる体制を作っておくことが先決です。繰り返しになりますが、「何を見て問い合わせたのか」を事前に聞くこともその1つで、当社はフォームに記入してもらうだけでなく、お客様への訪問時にセールスが必ずヒアリングするようにしています。この回答が蓄積されれば、そこに相関関係を見出せます。
あとは、KPIを事前に決めておくことですね。当社の場合、コンバージョンを取ること、つまり問い合わせを獲得するために実施したので、そのためにはどれくらいの問い合わせが獲得できそうなのかを見定め、回収ラインを確認し、コンバージョンレートや必要PV数をシミュレーションしてKPIに落とし込みました。
――テレビCMやオフライン広告は、必ずしもブラックボックスではないわけですね。
完全なブラックボックスではありません。たとえばWebサイトのアクセスなどもそうですが、変化は確実にデータとして現れます。当社の場合で言えば、テレビCMを打ったときの時間帯によってPVも上がり、コンバージョンも出ているので、PDCAを回すデータは取れると思います。
――実施して検証を重ねれば、テレビCMでも、デジタルマーケティングのように反応を改善したり、成果を上げることができますか。
そうですね、特にBtoB/SaaSの企業の場合は、そういう検証がしやすいと思います。なぜならサイト訪問から受注決定まで各指標を追いやすいためです。これくらいのコンバージョンで受注率はこれくらい、売上予測はこれくらい、と目標や予想が立てやすい。逆算しやすいので、期待値を明確にすれば、いろいろなやり方を実行して成果を出していくことができると思います。
――今後もテレビCMやタクシー広告などのオフラインの取り組みは続けていかれますか?
そうですね。実は直近では静岡でテレビCMを実施しました。石川県だと夜のバラエティ番組の反応が良かったのですが、静岡県では朝の情報番組のほうが、反応がありました。こういう知見も、実施していくことで蓄積されます。やってみることで見えてくるものがありますし、コストもデジタルよりはかかりますが、予想よりも予算を抑えることもできます。今後もこうした挑戦を続けていきます。