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失恋後ケアサービス

 Tinderを筆頭に世界中で普及するオンラインデーティングサービス。それにともない「出会い」の機会は増えている。しかし、それは同時に「別れ」が増えていることも意味している。これまで手付かずだった市場だが、高い潜在需要を背景に「別れ」にフォーカスしたサービスが登場。その最新動向をお伝えしたい。

※本記事は、2019年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』42号に掲載したものです。

 オンラインデーティングサービスの台頭で、恋愛パートナーと出会う機会は増えていると言えるだろう。

 世界最大級のマッチングアプリTinderのWebサイトによると、同アプリは190ヵ国以上でサービスを展開し、1日あたりの閲覧数は20億回に上るという。1週間あたり100万組がデートをし、累計のマッチング数は300億回を超えたという。

 Tinderの他にも、Bumble、OkCupid、Grindrなど様々なサービスが登場。調査会社IBISWorldによると、米国におけるオンラインデーティングサービスの売上高は2019年に30億ドル(約3,300億円)になる見込みだという。

Bumbleアプリ(App Storeより)https://apps.apple.com/jp/app/bumble/id930441707
Bumbleアプリ(App Storeより

 ピュー・リサーチ・センターの調べによると、2013~2015年の間、米国の18~24歳のオンラインデーティングサービス利用者は約3倍増加。オンラインデーティングサービスの登場によって出会いが増えた一方、別れの場面も増えていることが考えられる。

 そのことを示唆するように、最近「失恋後のケア(post-breakup care)」をテーマにしたオンラインサービスがいくつか登場している。テクノロジーの力によって出会いは近代化してきたが、別れに関してはほぼ手付かずだった。このギャップを埋める新たな試みに人々の関心が集まっている。一体どのようなサービスなのか、その実態を探ってみたい。

失恋がもたらす心身へのダメージ

 「出会い」と「別れ」は人間関係において対をなすもの。しかし、コンシューマー向けのサービスでは、これまで「出会い」のみに焦点が当たっていた感が否めない。

 様々なサービスを通じて多くの出会いが生まれるが、一方でそれと同じだけ別れも増えることになる。精神的に発展段階にある若年層にとっては、別れによって被るダメージは深刻なものになる可能性がある。

 また、若年層の別れとその精神的影響を分析した研究も増えており、その深刻さが明らかになってきている。

 カナダ・ニューブランズウィック大学のルチア・オサリバン心理学教授のまとめによると、失恋は若年層における心理的ストレスの主な要因になっているだけでなく、自殺の主要要因でもあるというのだ。ある研究調査では、失恋によってうつ状態を経験した人の割合は40%に上ったという。

 この他にも、不眠症、薬物依存、自傷行為、侵入思考などを経験する割合が高い。失恋後の脳の状態をfMRIで調べた研究もあり、それによると失恋後の脳は薬物離脱と同じような状態であることが明らかになったという。

 近年は「ゴースティング(ghosting)」や「クッキージャーリング(cookie-jarring)」と呼ばれる付き合い方・別れ方が増えており、若者の心理状態は不安定になりがちだ。

 ゴースティングとは「幽霊のように消え、連絡などを取れなくして恋愛関係を終わらせる」というもの。ニューヨーク・タイムズが伝えたYouGovなどの調査では、米国では11%の人がゴースティングをしたことがあると答えている。またELLEの簡易調査では、男性は16.7%、女性は24.2%がゴースティングをしたことがあると回答。同メディアは、TinderやGrindrなどのデートアプリの普及によって「常に他にいい人がいる」という考えを持つ人が増えており、これがゴースティング増につながっている理由の1つと指摘している。

 「クッキージャーリング」もデートアプリの普及がもたらしたものだ。付き合っている相手がいるものの、他にもバックアップとして数人相手がおり、不安や不満があると、バックアップの相手に乗り換えるというもの。特に目当てのお菓子が目の前にないときでも、クッキージャーに手を突っ込んでクッキーを探してしまう状態を指している。

Photo by Gabriel on Unsplash
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この記事の著者

細谷 元(Livit)(ホソヤ ゲン)

シンガポールを拠点にフィンテックやドローンなど先端テクノロジーに関する情報を実践を通して発信。現地ネットワークを生かしアジア新興国のリアルを伝える。Livit Singapore CTO。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/25 14:30 https://markezine.jp/article/detail/31350

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