BtoB企業が保有する「顧客データ」の40%は活用できる状態ではない
「Sansan」のようなサブスクリプション型のサービスにとって最も重要なのは、「ユーザーに長く使い続けてもらうこと」である。そのためには、既存顧客に対して継続的な支援を行い、ニーズを逃さずアップセル/クロスセルを行っていくことで継続利用を促進し、LTVの向上を目指していくことが重要だ。
「LTVの向上には、営業現場の活動サイクルが重要となってきます。かつての営業現場では、各々の経験という属人的であいまいな根拠で打ち手を実行していたため、なかなか結果が出ない場合もありました。しかし現在では、顧客データを活用することによって、根拠のある打ち手をスピーディーに実行できるようになりました。そのため、顧客データはただ蓄積するだけではなく、活用できるようにきっちりマネジメントしていくことが重要です」(里見氏)
しかし、「Report: Poor Data Quality Impacting B2B Lead Generation」(Integrate調査)によると、BtoB企業が保有する顧客データの40%は、データ重複や一部情報の欠損などによって、活用できる状態ではないという。活用できないデータをクレンジングしようにも、人力でデータメンテナンスを行うには高いコストが発生し、工数も大幅にかかる。また、顧客データは各部門単位で個別最適化されているケースも非常に多い。
Sansanが直面した課題
では、こうした顧客データに関する課題を、企業はどう解決していけばよいのか。「同様の課題を抱えていた」という里見氏は、同社の例を基に次のように解決策を述べる。
「当社は以前、SMB企業をメインターゲットとしていましたが、2017年からエンタープライズ企業への導入拡大も進めていくことになりました。それまでに保有していたリードデータを元に、アプローチすべきターゲットの抽出などを行いたかったものの、データが適切に管理されておらず活用できない状態でした」(里見氏)
同社ではMAやCRMツールを導入していたものの、「部署ごとにデータが個別最適化され統一されていない」「情報が重複している」「情報が古い」「営業が使いたい属性情報を記録していない」「大企業の場合は部署ごとの登録になっている」といった問題が、顧客データの活用を阻害していた。特に多いのが企業名等の表記揺れで、同一企業の情報を適切に関連づける必要もあった。
「SMB領域での拡販を目的にしていたときは、リードデータがそのまま意思決定者につながる可能性が高かったのですが、エンタープライズ領域では、(担当窓口が不明な)リードデータが意思決定者につながるケースはとても低くなります。その企業のあらゆる情報を活用して、包括的にアプローチしていく必要がありました。同じ企業の情報を統合し、法人マスターデータとして活用できるようにしたいと考えていました」(里見氏)