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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

テクノロジー×クリエイティブで考えるべきは、何歩先を行くか

プロジェクトには「愛用者」をアサイン

――日産自動車との取り組みは、最先端のテクノロジーを実用的なサービスに取り込んだ成功事例と言えますよね。

 あれはまさしく、日産自動車様のR&Dチームと、すごく先の未来を見据えて企画したものです。

 ARゴーグルにより窓ガラスがディスプレイとなり、雨が降っていても快晴のような風景を映し出したり、路面の状態や見通しの悪い道路の情報が表示されたりします。また、家族や友人、仮想キャラクターの3Dアバターを搭乗させ、一緒にドライブを楽しんでいるような体験も実現しました。

 ドライバーの健康状態も確認し、眠気が強いときはコーヒーブレイクを進めるアシスタント的な機能や、プロドライバーのアバターによる運転スキル向上サポート機能もあります。

 今回はCES2019というアメリカの中でも先進的な技術が集まる場での発表だったので、5〜10年先に浸透する可能性のある技術のほうがマッチするんです。

 ただ、技術のすごさがすぐに伝わるわかりやすさも大事です。日産自動車の技術がどのように使えるのか、ユーザーがわかりやすく実感できるよう、我々がサポートに入りました。日産の優れた技術力をユーザー目線で翻訳し、実用的なサービスに落とし込むプロセス形成をお手伝いしたんです。

――そのような先端技術を用いた、エッジの効いた企画を立てたい場合、具体的にはどのようなプロセスを踏まれているのでしょうか。

 その技術に精通している人間をアサインして情報交換し、場合によってはクライアントとも議論してもらいます。専門外の技術を付け焼き刃で身に付けようとしてもダメなんですよね。たとえば、Vtuber関連の企画を立てようとなった場合、一日中Vtuberの動画を見ているような人間には敵わないんです。

――やはり、どれだけターゲットを理解できているかが重要なんですね。

 ターゲットをどれだけ正確に想像できるかは重要です。自分自身がターゲットと同じ感覚を有しているのがベストだと思います。たとえばInstagramに関する企画を考えるにしても、自分が一般ユーザーとして利用していなければほぼ確実に上滑りな企画しか生まれないでしょう。あとは、「SNS」というくくりで考えていても高確率で滑ります。

 SNSの中でも、Facebook、Twitter、Instagramなど各プラットフォームの特性を理解しなければいけない。さらにその中でも、どのような属性のユーザーがいるのかも知ろうとするべきです。

 たとえばTwitterをとっても、身近な友人とのコミュニケーションを目的としたアカウント、ビジネス用アカウント、好きなアイドルの情報収集用のアカウントなど、様々な属性が存在するわけです。

 だから、様々な属性を根気強く観察することが重要です。ただ、年齢を重ねると直近のSNSの動向を理解できなくなってきます。どうしても理解できない場合は、属性に近い人をつかまえて仲間にしていくしかありません。

――ちなみに泉さん自身は、元々テクノロジー領域に関心があったのでしょうか。

 ありましたね。中学時代は「Adobeに就職したい」と思っていました。というのも、親戚が看板屋を営んでおり、子どもの頃から遊びでMacを触ったり、Photoshopでデザインを作ってみたりする機会が多かったんです。子どもながらPhotoshopの機能に感動して「Photoshopなど、プロのクリエイターが使うようなツールを作りたい」と感じました。それから高専に入って、大学に編入。大学院まで一貫して情報工学を学んでいました。

――情報工学の知識をそのまま活かすなら、一般的にはエンジニアを目指すと思うのですが、企画職を選んだのはどのような理由からでしょうか。

 情報工学を学ぶうちに、テクノロジーを翻訳する力に自信を持ち始めていたからです。テクノロジーで何ができるのかを理解した上で、実際どのように活用すればいいのか、企画に落とし込む方向に興味が向いていきました。だから、最新テクノロジーを理解し、実用的なサービスに翻訳する今の仕事はすごく楽しいしやりがいを感じていますね。

NISSAN Invisible to Visible
NISSAN Invisible to Visible

どんな技術を使うにせよ、まず優先するべきはユーザー理解

――パートナーとしてより良い関係性を築くために、クライアントの担当者に対して何か求めることはありますか。たとえば「何か新しいことをやりたい」ではなく、もっと具体的な話をしてほしいと感じたことはないのでしょうか。

 いえ、そのような漠然とした内容でもまったく問題ありません。相談していただけるだけでも嬉しいですし、どのような手段が適しているのかを考えるのは私たちの役割なので。クライアント側に求めることがあるとすれば、ターゲットの理解ですね。自社のターゲットを深く理解し、明確なペルソナを描けるぐらい、解像度を上げておいてもらえると嬉しいです。

 ペルソナが曖昧なままだと、企画の良し悪しの判断がしにくくなります。クライアント自身がペルソナに憑依して、その人の気持ちを理解できていないと良い企画は生まれません。

――最後に、今後の展望について教えてください。

 今一番やりたいのが昨年からFacebookが提供している「SparkAR」を活かした企画です。これまで、スマホ上で起動するARはアプリを入れないと使えなかったんですよね。アプリをダウンロードしなければいけないと、友達にお勧めしにくくて、あまり広がらないという課題がありました。一方で、既に使っているアプリ上で体験できれば気軽にシェアできる。SparkARは、FacebookカメラでARを体験できるので、Facebookユーザーであれば利用のハードルは限りなく低くなると思います。

 また、アプリを使わずブラウザ上で起動する「WebAR」の活用も進めていきたいです。手軽に体験できるWebARはまさしく0.5歩先の技術だと思うんです。日本にはまだ決定的な事例がないので、私たちが新たな事例を作っていきたいです。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/25 15:30 https://markezine.jp/article/detail/32235

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