店舗スタッフから見た視点で、作業効率化を促進
実際の店頭販促のオペレーションには、どんな課題があるのだろうか。これについて、「従来、ポップやポスターなどの販促物は、異なる売り場のアイテムが一括りで梱包されていたため、店舗スタッフは店内を何度も往復して販促物を取り付けていました。加えて、販促物を掲出した後には、適切なタイミングで取り外す必要があります。一つひとつチェックしながら回収するのは人的リソースがかかり、またミスも発生しがちでした」と松尾氏は答える。
これらの課題解決に向けて、「店舗での販促物を取り付ける業務負荷を削減するために、売り場や棚順ごとに販促物を梱包して配送しています」と松尾氏。このきめ細かな仕組みにより、店舗スタッフは店内を往復することなく販促物を設置でき、ここも店舗業務の効率化に大きく貢献しているという。
さらに店舗スタッフの作業効率化のため行っていることとして、「細かいことですが、たとえばポップに商品照合用の画像や、撤去作業用のカラーバーを入れています。たとえば『今週はピンクのカラーバーのポップだけを外す』とルールを定めることで、作業効率が上がりミスが起こりにくくなります。昨今、増加している外国人の店舗スタッフの方にとっても、ポップなどの裏側に商品写真を入れることで、日本語が読めなくても、ポップと商品の紐付けが容易にできるようにしています」と説明。
現場の課題とその背景を同社が深く理解しているからこそ、きめ細かな配慮が行き届いた解決案を提示できるのだろう。
「ポップのサイズ最適化で売り上げが2.4倍」という検証結果も
先のような細かな店頭販促の課題を、水上印刷ではどのようにキャッチしているのだろうか。実は水上印刷は、実証店舗という位置付けで、コンビニ店舗を自ら経営しているのだ。
「社内の担当者が実際にそこで働き、どういう業務負荷があるのか、どんな苦労があるのかということを検証しているんです。メーカーさんから送られてきた販促物のサイズが合わず、店内に設置することが難しいことも少なくなくありません。ただ、こうしたことをテストできる場は意外とないんですよね。そもそも本部とメーカーさん、どちらが確認すべきなのか、担当も曖昧で、誰も入り込めない領域になっていました」と松尾氏は語る。この店舗での気づきが、水上印刷のかゆいところに手が届くサービス立案に結びついている。
また、この実証店舗では、販促物の効果測定も行っているという。たとえば、どのサイズの什器にも設置できる汎用的な販促物にすると小さくなってしまうが、アイスクリームのコーナーのポップを什器のサイズに合わせた大きさのものと入れ替えたところ、1週間で売り上げが2.4倍になったという。「もちろん気候など他の要因もあると思いますが、サイズを最適化することで一定の効果があることがわかっています」と松尾氏。