案件を横断して支援するマーケティングフォース
――では、立ち上げられたばかりのマーケティングフォースについても教えてください。
岩田:野村ホールディングスの傘下にある、バーチャルなマーケティング支援チームです。グループ内全体を通して、各部署や各案件、また各PODで発生する案件に対して、必要に応じて必要なメンバーが落下傘のように降りて協業し、また戻っていく流れになっています。私はこのチームを担当しております。
大きなメリットは、部署や案件を超えて支援することで、効率化やナレッジの共有ができることです。いわば、全社のマーケティング・ハブとしての機能を担っています。
大小様々な施策を担当することも、事例の蓄積と共有という点で有効です。たとえば私がこの2ヵ月(※取材は10月時点)で担当した中でも、メールのプロモーションだったり、採用PRだったりと多種多様です。これまでは、やりたいことを思いついていても、誰に相談すればいいかわからないことが多かったと思います。マーケティングフォースには様々な領域のプロフェッショナルが集まっているので、「とりあえず聞けば回答は得られる」場にしていきたいと考えています。

――この改革によってどのような展望が開けているのでしょうか?
湯原:野村證券は前述のように対面接客に強みがあり、業界でも営業力が強いと言われてきております。それゆえ、新商品を展開する際には新聞広告を打つといったシンプルなマーケティング活動を中心に展開してきました。
ただ、今の時代のお客様は様々な情報に囲まれていて、プロダクトありきの提案が“心地よい”と感じていただけるわけではありません。「広告で新商品のことを知り、買った」という顧客体験ではなく、あくまでお客様それぞれのライフプランがあり、その中で今このプロダクトが必要だろうと長期的な展望に基づいて判断いただくほうが、長きにわたってお客様と当社でよい関係を築けると思います。
やはり、お客様の真のパートナーになるには、こちらが売りたいものを売るという発想では難しい。お客様のお困りごとに対して、ご提案していこうとすると、結果として心地よく長く取引をしていただけて、お客様の幸せに貢献することができます。ならば組織もそれができる体制にしないといけませんし、お客様の行動を察知できるデジタルも欠かせない。したがって、対面営業の強みとデジタルとの融合も今まさに進めています。
野村のアセットをデジタルの力で活かす
――最後に今後の展望をうかがえますか?
湯原:我々のすべきことが明確になり、The PODsという新しい体制も構築できつつありますので、ここからはそれらがきっちりワークするようにしていきます。同時に、社内人材だけではまだまだデジタル、マーケティングに関する知見が豊富とは言えませんので、それを補う外部からの人材や各専門領域のアドバイザーの方々に、より気持ちよく仕事ができるための仕組みも考えていきたいですね。違う価値観を持つ人同士がコミュニケーションを図ってこそ、新しい価値が生まれるのではないかと思います。
岩田:私が当社に転職を決めたのは、野村證券の活動を知るほど、これだけの大きな企業が本気で変わろうとしているのだとわかったからです。お客様に向き合い、地に足の着いたDXを推進しながら、この顧客志向型組織が証券業界や他の業界にも好影響を与えるものになればと思いますし、そこに寄与したいです。
池田:2人が話したとおりですが、やはり人材の大切さを実感しています。この2年半で、人が人を呼ぶような好循環が起きているので、その流れを止めずにいたいです。元々野村が持っているアセットと、お客様を精緻に知ることができるデジタルの力を掛け合わせて、多層的なメンバーとともにお客様に寄り添っていけたらと思います。
