サイト内リスティング広告は3rd Party Cookie規制へのソリューション
押久保:昨今、日本でもリテールメディアや、それを支えるリテールメディアテックへの注目が高まっています。これらがEC事業者のどのような課題を解決するのか教えてください。
山崎:まずリテールメディアとは、Amazonやウォルマートに代表されるように、小売りという「売り場」を持ちながら、そこに訪れるユーザーに対して広告を配信する「メディア」としての機能を持つECサイトです。この分野に使われる広告配信テクノロジーを総称して、リテールメディアテックと呼びます。
これらが注目されている背景の1つとして、3rd Party Cookie(以下、3PC)の規制があります。集客にリターゲティングを使いにくくなるので、商品を購入したい人たちが集まるリテールメディアにその商品の広告を出す、という戦略です。
西井:たとえばスポーツ用品のECサイトで、シューズを検索している人にまさにそのタイミングでシューズブランドが広告を出すことができれば、購買に結びつく可能性が高まるのは容易に想像できますよね。
山崎:しかも広告を出すのはスポーツ用品が運営するECサイトなので、ファーストパーティデータを使うことになり、3PCの規制は関係ありません。よって、リテールサイト内検索リスティング広告に勝る3PC対策はないと、私は考えています。
押久保::サイト内検索リスティング広告というと、たとえばどのような製品ですか?
山崎:私が社長を務めるサイジニアグループの、広告配信基盤が強いデクワスが提供する検索連動型広告ソリューション「デクワス.LISTING」などが挙げられます。そもそもリテールメディアに集まるのは特定の製品を買いたい人たちばかりなので、通常のリスティング広告よりもはるかに効果は高いと考えられます。その一方で、どうやって自社製品のエンゲージメントを高めてもらうかが課題となります。
西井:Amazonなどがわかりやすい例ですが、リテールメディアは横並びで様々なブランドやメーカーの製品を扱いますからね。だからこそ、EC内の検索リスティング広告は非常に有効な手段になるわけですね。
山崎:加えて、その前段階である「いかに自社のECに来てもらうか」も検討しないといけません。そこで私たちが考えているのが、ハッシュタグを活用してECサイト自体へ誘導する、というソリューションです。
ユーザーの口コミからハッシュタグを抽出し、独自LPを生成
押久保:なるほど。そのハッシュタグを活用したECサイト誘導について詳しく教えてください。
山崎:ハッシュタグは、InstagramやTwitterでよく見かけますよね。「#(ハッシュタグ)」の後に特定のキーワードを付けてつぶやくものです。
たとえばあるファッションECサイトでの口コミを見ると、商品レビューと共に「女性・30代・細め」や「女性・20代・背が高い」といったようなハッシュタグも一緒に投稿されています。そしてユーザーは商品を選ぶ時、口コミと共にこうしたハッシュタグで絞り込んで商品を検討しているわけです。
西井:実際、口コミレビューが1,000件あっても全部見るわけにはいきませんからね。自分と属性の近しいものを絞り込む必要があります。
山崎:その通りです。そこで考えたのが、商品説明や口コミからホットなキーワードを抽出してLPを自動生成する仕組みです。2022年7月に発表したハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」は、LPのURLにそのキーワードを入れることで、検索した時に絞り込みやすくするエンジンです。特徴として、そのLPにレビューが入ることが挙げられます。サイト内にレビューコンテンツを実装できるレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を提供している点が、当社ならでは強みとなりました。
西井:ユーザーがわざわざハッシュタグを付けなくても、集まったレビューのUGCからハッシュタグ化していくということですね。
山崎:ロングテールの商品であればかなりのデータの蓄積があるので、おもしろいキーワードを抽出できると思いますよ。