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なぜ今マーケターがプライシングを学ぶべきなのか

ナイキ、トヨタの価格戦略から紐解くプライシングの要諦 価格の改善が利益向上への近道に

 昨今、エネルギーの需給バランスの崩壊など、複数の要因により様々な商品・サービスの値段が上昇している。企業にとって値上げはやむを得ない状況だが、単純な値上げは顧客離れを引き起こしかねない。一方で、値下げをすれば良いわけでもないだろう。悩ましい課題だが、その解決にはプライシングを学ぶことが有効だ。本連載では、今後も物価高が続くと予想される中、価格戦略の策定に臨む上で有効となる複数のフレームワークを紹介。第一回は、マーケターがプライシングを学ぶ意義と、プライシングのインパクトについて例を挙げながら解説する。

物価高騰で注目の的となった「プライシング」

 2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の火蓋が切って落とされた。いわゆる「ウクライナ侵攻」だ。紛争開始から1年が経った今でも収束は見通せず、むしろ泥沼化の様相を呈している。

 ウクライナ侵攻を理由にロシアやウクライナからの穀物輸出が滞り、多くの日本企業が甚大な被害を受けていることだろう。ロシアからの天然ガスの輸出も遮断されたことで食糧や資源、エネルギーの需給バランスが崩れ、物価は急激に上昇。以前から続いていた円安による輸入コスト増が重なり、これまで「ゼロインフレ社会」と呼ばれていた日本でも、2023年1月の消費者物価指数は前年同月比で4%近く跳ね上がった

 コストアップしたものは、原材料費から包装資材費、エネルギーコスト、物流費、人件費と枚挙に暇がない。連日ニュースの見出しに値上げのトピックスが躍ったことも印象深い。2022年の食品の値上げは累計で2万品目を超え、2023年もその傾向は変わらず、2月には再び値上げのピークを迎えた。

日本の消費者物価指数の推移(全国・前年同月比)【クリック/タップで拡大】

 このような状況下で、これまであまり値上げを経験してこなかった日本の企業が路頭に迷う姿は想像に難くない。「原価が上がった分、値上げしたい。しかし、値上げをすると売れなくなるのでは」「値上げがしづらい商品はサイズを一回り小さくして今の利益率を保とう」このような会話が今、業種を問わず様々な企業で飛び交っているのではないか。

価格戦略に求められるマーケターの知見

 私はコンサルティングを生業としているが、業界を問わずプライシングに関する質問を受ける機会は格段に増えた。どの企業も「プライシングに取り組まなければならない」と感じ始めた証拠ではないだろうか。

 ここで強調しておきたいのが、マーケターの知見はプライシングにも役立てられるということだ。プライシングは経営者や商品開発担当者が内輪で決めて良いものではない。ここまでお伝えした通り、商品の価格は市況に大きく左右される。普段から市場動向や消費者インサイトを敏感に感じ取っているマーケターの知見が、価格戦略を考える上で有効なのだ。

 また、プライシングはブランド戦略と切っても切り離せない。しかしながら、プライシングはマーケターと名乗る多くの人がこれまであまり重視してこなかった要素だろう。消費者視点を持ち、顧客体験設計のプロであるマーケターが、この機にプライシングを学ぶことで、ブランディングに紐づいた価格戦略を策定でき、この未曽有の物価高も乗り越えられるのではないか。

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この記事の著者

下 寛和(シモ ヒロカズ)

 株式会社野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティング部 グループマネジャー。慶應義塾大学卒業後、トヨタ自動車、会計系コンサルティング会社を経て、2014年に野村総合研究所に入社。専門はプライシング、原価企画、SCM、データサイエンス。日経BP「プライシングの技法」、技術情報協会「利益を拡大させ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/41598

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