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MarkeZine Day 2023 Spring

ネーミング没案は930 ヤッホーブルーイング「正気のサタン」の100人に1人に刺さるブランド開発

調査を重ねて複層的なインサイトを見つけ出す

 具体的な製品開発までのステップとしては、「ターゲット選定・インサイトの導出→コンセプトの開発→ネーミング・デザイン」の順に進めていったと語る。

 1ステップ目の「ターゲット選定・インサイトの導出」では、100人に1人から愛されるコンセプト開発のために、徹底してインサイトに迫る。具体的には、「どんな人のどんな時に届けたいのかを掘り下げる」ことだという。

画像を説明するテキストなくても可

 そのためにまずは、製品投入戦略・既存データ分析・ひらめきから仮ターゲットと仮機会の設定を行う。

 「製品投入戦略」は、市場に対して押し出すヤッホーブルーイングの考えであり、ここでは「クラフトビールとウェルビーイング」となる。

 「既存データの分析」では、まずノンアル・低アルに絞らず、コロナ前後での健康ニーズを調査し、そこからインサイト例を抽出。それらを踏まえてアンケートにて検証し、仮説を作るという。今回は、仮ターゲットを「欲望には正直なずぼら健康層」とした。

 「ひらめき」は、市場やSNSのトレンドと仮ターゲットを重ね合わせてキーワードを作る工程だ。健康ニーズの拡大やウェルビーイングと仮ターゲットの「ずぼら健康層」を重ね合わせて、「嗜好性と健康の両立」というテーマが浮かび上がり、「ノンアルではなく+アル(たすある)」とした。

 仮ターゲットを設定した後は、インサイト探索、インサイト検証と進めていく。類似カテゴリーの製品ユーザーの動向や無意識な行動要因などを「観察」し、全員が合意するまで徹底的に「ディスカッション」、そして仮ターゲットと近い属性の人にインタビューする「デプスインタビュー」、と三つを行う。

 特にデプスインタビューでは、ラダリング法で属性、機能的、情緒的、価値観を聞いていく。ターゲットに共通する価値観について、それぞれが「なぜ大事に感じているか」を深掘る設問を繰り返す

 「これにより複層的なインサイトができあがっていきます。誰もが持つ、相反する感情を引き出し、どこにつながっていくのかの傾向を見ることが重要です」(本田氏)。

 そうした結果、「食事はちゃんと楽しみたい」「酔いたくない」「パフォーマンスを維持したい」の三つをインサイトと定め、「酔いでパフォーマンスを崩すことなく、食事やその後の時間を楽しみたい」と導き出した。

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 こうして導き出した複層的なインサイトから、「仕事も家庭も忙しい、ゆとりなし世代」というペルソナを浮かび上がらせた。

導き出したインサイトをさらに深堀してコンセプトを絞る

 次はコンセプトの開発だ。

 流れとしては、顧客が利用するシーンとそこで感じられる価値を具体的に描き、情緒的な便益のコンセプトを設計することで、世の中にまだない氷山の一角を志向していく。

 ヤッホーブルーイングでは、インサイトを基にいくつかの案を作り、それぞれのコンセプトシートを作った後、それを受容性テストにかけ、結果を分析しており、一連の工程を一つのサイクルとして繰り返す。そして、その最終型をコンセプトとしてまとめているという。

 最初のコンセプト案は、前述のステップで導いたインサイト群から出す。理想像を提示する「食事はちゃんと楽しみたい」と「パフォーマンスを維持したい」を基に二案ずつコンセプトを検討したという。「食事はちゃんと楽しみたい」からは「料理のおいしさを引き立てるアルコール入りの食中飲料(P)」「大人の食事時間を食事はちゃんと楽しみたいアルコール入りの食中飲料(M)」、「パフォーマンスを維持したい」からは「つかの間、気持ちを解放する大人のアルコール入りリフレッシュ飲料(R)」「ちゃんとおいしくて後には残さないalc.0.7%の低アルクラフトビール(N)」が作られた。

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コンセプト開発でも大事なのは票の多さではなく100人に1人からの深い共感

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/42057

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