従業員全員の「デジタル人材化計画」を推進中
桐山氏が語るように、「Pharma DIGITAL」と三つの鍵が、MRのデジタルマーケティングへの理解浸透の一助になったのは間違いないだろう。石川氏も次のように語る。
「営業とマーケティングは、相容れない部分も確かにあったが、うまく連携することが企業の成長につながると考えました。そして、私も桐山も、過去にMRとしての仕事経験がある。その経験を踏まえて、MRの人たちに泥臭く、かつ丁寧に説明しながら両者の連携に努めました」(石川氏)
そして、両者連携のために旭化成グループが推進しているもう一つの取り組みがある。それが、デジタル人材の育成だ。
取り組みの一例が「オープンバッジ制度」だ。同制度では、従業員はデジタルスキルのレベルによってLevel 1から5までのバッジを取得できる。Level 3までの人を「デジタル活用人材」、Level 4以上の人を「デジタルプロ人材」と呼び、「2024年度には全従業員がLevel 3以上を取得する『従業員デジタル人材化計画施策』を現在、推進中だ」と石川氏は意気込む。
従業員同士がトライ&エラーを認め合うことが大事
なお、石川氏がセンター長を務めるCXトランスフォーメーション推進センターでは、従業員向けに、デジタルマーケティングに関する知識・スキルの習得支援を行っている。
「この知識・スキルの習得支援も3本の柱で体系的に行っている」と石川氏。まず一つ目の柱「知識を深める(input)」では、前述のオープンバッジのレベルごとにeラーニングコースを提供。たとえば、デジタルプロ人材とされるLevel 4を取得するためのコースでは、計20時間以上の学習動画が用意されており、それを履修し、テストに合格するとLevel 4に昇格するのだ。
「さらに、Level 5取得コースでは、デジタルマーケティングのオペレーションを一人でできる水準にまで引き上げたいと考えています」(石川氏)
2本目の柱「疑似体験する(output)」では、実際のマーケティング活動を疑似体験できるワークショップを開催している。さらに、3本目の柱「実務を高度化する」では、マーケティングの有識者や実務家をゲストに迎えた社内講演会を実施。2022年8月から現在までに全14回開催し、毎回300~400人が聴講するなど好評を博している。
また、忘れてならないのは、受講したメンバーの声を広げることだという。というのも、デジタルマーケティング推進の原動力は、全社共通の価値観なのだ。「ややもすると、斜に構えたり、冷ややかな目で見てくる従業員も出てくる」と石川氏。そこで、同社の社長を含めたeラーニング受講生の声を社内サイトに掲載し、従業員のモチベーションを高める取り組みも継続的に行っているという。
石川氏は最後に「(新しい文化を根付かせるためには)従業員が自らのスキルを十分に発揮できたり、トライ&エラーを奨励したりするような価値観の共有が不可欠だ」と指摘。デジタルマーケティングの導入においてもその点を押さえるよう聴講者に助言を送り、本セッションを締め括った。