ChromeのサードパーティCookie廃止は、大きな転換点となる
――ChromeのサードパーティCookieの段階的廃止がスタートするなど、ポストCookie時代の本格到来が近づきつつあると思いますが、御社ではポストCookieの現状をどのように考えていますか。
ポストCookieは3~4年前から本格的な議論がスタートしました。2020年3月にはAppleがユーザーのプライバシー保護のため、iOSデバイスでのWebトラッキングを制限する機能であるITP(Intelligent Tracking Prevention)をアップデートし、サードパーティCookieを完全にブロックしました。
他の大手プラットフォームもAppleのようにCookieへの対応策を始めています。そして2024年、Googleもブラウザ「Chrome」においてサードパーティCookieの段階的廃止をしていくと発表しており、この問題に再び注目が集まっています。
これだけ大きな変化が3~4年の間で起こっているのですが、まだポストCookieに対する現場での課題意識はそこまで強くなっていないというのが現状だと私は考えています。
――これだけ各プラットフォーマーがCookie廃止・制限に向けた取り組みをしているのに、なぜ課題意識が強まらないのでしょうか。
Cookieの廃止・制限が、デジタル広告の成果にはっきりとマイナスの影響を及ぼしていると断定しにくいためです。ITPでは既にサードパーティCookieがフルでブロックされていますが、配信設計やクリエイティブなど様々な変数で効果が変わってしまうため、現場の運用者からすると広告パフォーマンスに変化があってもCookie制限の影響か判別できないのです。
また、プラットフォームの多くはサードパーティCookieに依存しないターゲティング方法の提供が進んでおり、変化に気づきにくい状況を作ってしまっています。Cookie廃止・制限は確実に何らかの影響を与えているが、その変化に気がつけないのです。
しかし、ChromeのサードパーティCookie廃止はデジタルマーケティングの大きな転換点となるはずで、今はその過渡期と言えます。だからこそ、ポストCookieの最新動向をキャッチアップし、適切な対策をとる必要があります。
――「まだ広告主や広告代理店などの課題意識が低い」とお話がありましたが、対策もまだ進んでいない印象でしょうか。
ポストCookieへの対応は、多くの企業でまだ進んでいないと感じています。広告代理店の中でもポストCookieの影響を正しく認識できているところが限られるため、その先の広告主まで正しい知識や対策が行き届いていません。
一部広告主ではファーストパーティデータとコンバージョンAPIを活用した計測に取り組んでいますが、業界全体で見るとごく少数です。
求められる対策はターゲティングとコンバージョン計測
――では、広告主や広告代理店はどのような対応が必要になると思いますか。
サードパーティCookieの廃止によって影響を受けるのは、ターゲティングとコンバージョンの計測の2つです。この2つは対策をしないとこれまでのパフォーマンスが発揮できなくなります。
1つ目のターゲティングに関しては、業界全体で新たな手法の確立を模索している状況です。Googleはユーザーのプライバシー保護と広告の効率化を両立する技術として「Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)」を提唱していますが、それもまだ完全な代替手段とは言えない状況です。
それ以外にも共通IDの活用やコンテキストターゲティングなどあらゆるターゲティング手段が試行されていますが、どの手段が本流になるかは未知数です。
2つ目のコンバージョンの計測に関しては、次世代の手法が確立されつつあります。具体的には、ファーストパーティデータとコンバージョンAPIを活用した計測です。
ユーザーのメールアドレスや電話番号などのファーストパーティデータを広告主の顧客データ基盤を通して広告配信しているプラットフォームとAPIで連携するのが、次世代のコンバージョンの計測手法です。
まとめると、ターゲティング手法に関しては様々なものにトライしつつ、コンバージョンAPIを活用した計測の準備をしておくことが、今後のデジタルマーケティングに求められるポストCookieへの対応だと考えています。